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2014年06月09日

誰それの娘と言わないで

道草百人一首・その26 
「有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」(大弐三位)【58番】

誰それの娘と言わないで

藤原賢子(カタコ)。紫式部の娘である。太宰大弐正三位・高階成章(タカシナノシゲアキラ)と再婚。そこから、「大弐三位(ダイニノサンミ)」と呼ばれる。宇治十帖の作者は紫式部ではなく、娘の大弐三位ではないかという説もある。しばらく来なかった男が、「あなたが心変わりしていないか不安です」と勝手な手紙を寄越してきた。「どうしてあなたのことを忘れたりするものですか」と返すのだが、言外に「よくもそんなことが言えますね、忘れているのはあなたの方じゃございません」と優雅に嫌みをぶつけている。ところでこの歌の構造は、和泉式部の娘・小式部内侍【60番】の「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立」に似ている。「有馬山・猪名野」・「大江山・生野」と地名を詠み、それが「否」・「行く」の掛詞となり、三句目「ば」の接続助詞を経て、「そよ」・「ふみ」という掛詞が四句目に来る。男性への手厳しい返歌というところまでそっくりである。女優の有馬稲子は、百人一首のこの歌を芸名とした。



Posted by biwap at 06:36 │道草百人一首