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2021年08月31日

近江聖人中江藤樹

近江史を歩く16(高島市安曇川町)


 愛媛県大洲市の県立大洲高校。この学校は「中江藤樹邸址校」とも呼ばれる。中江藤樹が青年時代を過ごした屋敷址が学校の一角にある。後ろに見える大洲城には、中江藤樹の像があり、左に「孝」の字の刻まれた碑が見える。


 中江藤樹は、1608年に近江国高島郡小川村に中江吉次の長男として生まれる。9歳の時に伯耆米子藩の武士であった祖父の養子となり米子に赴く。その後、藩主の国替えと共にこの大洲に移住する。祖父の死去後、家督を相続。


 しかし27歳の時、脱藩し故郷の近江に戻る。母への孝行と健康上の理由。幸い追っ手は向けられず、郷里である小川村で、私塾を開いた。庭に大きな藤の木があったことから、藤樹書院と呼ばれる。身分の上下をこえた平等思想に特徴があり、武士だけでなく地元の農民や町民にまでその教えは広く浸透し、「近江聖人」と呼ばれた。


 さて、武士の地位を捨て、親への「孝」という大義に生きた近江聖人中江藤樹。果たしてそうなのだろうか?武士社会からドロップアウトした、苦悩する青年の自己実現とも見える。藤樹は官学である朱子学から、陽明学へとシフトしていく。藤樹の説く「孝」は親孝行ではなく、人間関係の根底にある普遍的な愛を意味する。藤樹の思想にキリスト教の影響を指摘する声も古くからあった。


 日本の陽明学の創始者とされる藤樹の思想は、大塩平八郎・吉田松陰へと連なっていく。陽明学は、人が心を溌剌と躍動せしめるなら、例え平凡でも、必ずそこに貴いものが存在すると説く。悩める青年中江藤樹の解答は何だったのだろうか?

  


Posted by biwap at 18:04近江史を歩くHP

2021年08月29日

小野篁と閻魔大王

近江史を歩く15「守山市焔魔堂」


 守山市焔魔堂町。以前から不思議な地名だと思っていた。守山駅西の旧中山道を歩いていると、その閻魔堂(五道山十王寺)の前にやって来る。五道とは人間が修行の結果行き着く五つの場所で、その途中に十の関所があり十人の王がいる。その一人が閻魔大王なのだ。この寺の閻魔像を作ったのが小野篁(たかむら)であるとされる。


 実は京都にも閻魔堂がある。京都東山にある六道珍皇寺の閻魔堂には、篁作と言われる閻魔大王と、篁の木像が並んで安置されている。篁は夜ごと井戸を通って地獄に降り、閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという。


 小野篁とは、何者なのか。「わたのはら 八十島かけて こぎ出ぬと 人には告げよ あまの釣船」。百人一首にあるこの歌の作者が小野篁である。「大海原を漕ぎ出して行ったと、都の人には告げてくれ」と言っているのだが、行き先は流刑地隠岐である。


 篁は遣唐副使に任ぜられるが、病気を理由に乗船を拒否。挙句の果てに、遣唐使の事業を風刺する漢詩を作る。これを読んだ嵯峨上皇は激怒し、篁は官位剥奪の上、隠岐へ流罪となる。後に赦され平安京へ帰り、官職に復帰する。人物・学識・文才ともに傑出した存在だが、反骨精神の持ち主で「野狂」とも呼ばれた。


 大津市小野には、小野篁神社がある。小野妹子・小野篁・小野小町・小野道風・・・。「小野」は伝説と歴史の里であり、同時に重要なキーワードでもある。


  


Posted by biwap at 21:37近江史を歩くHP

2021年08月24日

嘘つきは戦争の始まり


 今から30年前の話。日本が 90 億ドルをアメリカとその同盟軍に拠出するべきか否かの議論が始まった時、「イラクがペルシャ湾へ原油放出をした」として「油まみれ水鳥」の映像と写真が流された。こんなひどいことをしているイラクを攻撃するのは当然である。しかし、水鳥を襲った原油は、クウェート沖ではなくメキシコ湾でのタンカー座礁事故のものを流用したということが後に明らかになる。


 この1年前。ある1人の少女の証言が、TVで放映された。 「クウェートに侵入したイラク兵達が、保育器に入った未熟児を投げ出して殺すのをこの目で見ました。たくさんの赤ん坊たちがそんな目にあったのです」と、身を震わせながら、涙ながらに訴えた。その放送の後、アメリカ議会は湾岸戦争開始を採択した。
 後に、その少女がクワェート駐在のアメリカ大使の娘であり、しかも、某広告代理店がその少女を起用し、嘘の証言をさせたことがわかる。「ナイラ証言」というメディア・リテラシーの教科書的な教材だ。


 「女性や子どもの証言」「現地で現場を見た被害者は嘘をつかない」との根強い思い込みが、プロパガンダに利用されてしまう。疑問を持つことに疑問を持ってはいけない。おっさんたちが力づくで真実を捻じ曲げる方が、むしろわかりやすいのかもしれない。  


Posted by biwap at 11:28

2021年08月23日

スポーツを殺すもの


 コロナ感染制御不能化の東京パラリンピック。航空自衛隊「ブルーインパルス」のアクロバット飛行に、人は何を思うのだろう。

日刊ゲンダイ2021/08/23より
 東京五輪の余韻も冷めやらぬ中、24日から9月5日まで行われるパラリンピック。しかし、「商業主義」「勝利至上主義」「国威発揚」がまかり通っているのは、五輪とまったく変わらないという。五輪に詳しいスポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が、五輪とパラリンピックの抱える問題を喝破する。
―とにかくIOCは悪いウワサが絶えない。
「バッハ会長が13年に就任した際も、『ベンツで会長になった』と言われています。これは私が元IOC委員に取材して聞いた話で、高級車のベンツを各国のオリンピック委員会に贈り、票を集めたと。ちなみにサマランチ会長の時は現ナマだったそうですが」
―完全に買収ですね。
「今年7月には32年夏季五輪の開催地をブリスベン(オーストラリア)に決めた。本来ならば時間をかけて開催地候補を綿密に調査し、五輪に耐えうる経済状況なのか市民は賛成しているのかなどを調べ上げる。そうしたプロセスをほぼ無視して11年先の開催地まで決めてしまったのです。いかにIOCの尻に火がついているか、ということです。さらにこうしたIOCの腐敗体質がパラリンピックにも影響している」


―どういうことですか。
「IOCとIPC(国際パラリンピック委員会)は別の組織です。かつてのパラリンピックの開催地は、必ずしも五輪と同じではなかった。しかし、88年ソウル五輪からIPCがIOCに同調。それでも当初は組織間の連携が薄かったが、今回の『東京五輪・パラリンピック組織委員会』という名称が示すように、今ではほぼ一体化してしまった。パラリンピックは、戦場で負傷した元兵士を育成するための仕組みが欧米各国で制度化されている。一方で、五輪同様、国威発揚のためのメダル獲得競争の舞台とされ、勝利至上主義によるドーピング問題なども横行している。そのひとつの例が、00年シドニー大会でのスペイン・バスケットボールチームの不正です」
―どのような不正だったのですか。
「代表選手12人中10人は健常者なのに、知的障害者と偽って出場させたのです。まだあります。パラリンピックは障害の度合いによって、クラスが分けられる。だから『重度の障害の方が勝てる』とばかりに、クラス分けで虚偽申告をする行為も行われているのです。そもそも、障害の度合いを線引きするのは困難。知的障害となれば、なおさらです。クラス分け自体が新たな差別につながりかねない、という問題もあります」
―パラリンピックは高価な補助具の有無も問題視されています。
「通常の五輪でも公平不公平は生まれてしまう。いつでも有名メーカーのシューズを買える裕福な国と貧しい国では、条件が同じとは言えない。しかし、パラリンピックの高性能な義足、車いすなどはシューズの値段どころではない。五輪以上に資金のあるなしが結果に影響してしまう」
―選手強化に資金をつぎ込める国が有利では、五輪と変わりません。
「そもそも、IPCは障害者スポーツとは何であるかを考えているのでしょうか。リハビリの一環で行う者もいれば、気分転換やコミュニケーションの手段として行う者もいます。では、そうした障害者スポーツができる環境はどれほど整備されているのでしょうか? 特に日本の場合は悲惨です。本来、障害者スポーツを支援すべき資金や人材が、パラリンピックへの選手強化などに集中している。パラリンピックで活躍する選手が出てくれば、競技の裾野も広がるという根本的に間違った考え方をしているのです。むしろパラリンピックは障害者スポーツを壊しているのが現実なのです」
―それでもパラリンピックへの批判はあまり聞かれません。
「パラリンピックはどうしても、『ハンディを背負ってもあそこまでやれるんだ。感動だよね』ととらえられ、絶対に反対しなければならない『学校連携観戦プログラム』による小・中学生動員の根拠にもされる」
―選手に罪はないとはいえ……。
「現在、IPCは『障害者スポーツ』という名称を、『パラスポーツ』に変えてしまった。パラリンピック至上主義を徹底するためでしょう。もちろん、選手の努力そのものは否定しません。しかし、世界に約12億人いるといわれる障害者にとってのスポーツ環境づくりを最優先にすべきであって、パラリンピック至上主義は、本末転倒であり認められない」

  


Posted by biwap at 09:02

2021年08月17日

タリバンの練習問題



 アフガニスタンの首都、カブールまでついにタリバンに陥落した。すると、恐怖を訴える10代少女の映像が公開された。「アフガニスタンに生まれたという理由だけで、誰も私たちを気にしない。われわれは歴史の中でゆっくりと死んでいく」と絶望の涙を流した。米軍撤退で、私たちはタリバンの支配下に置かれる。世界は私たちを見捨てるのかという訴えである。
 「撤退」という美名のもとにアフガニスタンから惨めに逃げかえった米軍。しかし、この「撤退」に20年間の苦労と犠牲を無駄にした、人道危機をもたらした、アメリカの信頼を損なったという世論が巻き上がる。欧米メディアとそれに追随する日本メディアがプロパガンダ的一色報道を始めた時は、すこし頭を動かした方がいい。
 タリバンとは、イスラム教を学ぶ「神学生」という意味。隣国パキスタンのイスラム神学校で教育を受けた学生たちが「真のイスラム国家の樹立」を掲げて結成。1996年には、首都カブールを制圧して政権を樹立し、国土のほとんどを支配下に置いた。
 イスラム教を極端に厳しく解釈した政策をとり、女性の就労や教育を制限したほか、「偶像崇拝はイスラム教の教えに反する」として、世界的な仏教遺跡であるバーミヤンの大仏を爆破し国際的な批判を浴びた。
 2001年のアメリカ同時多発テロ事件では、首謀者とされた国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディンをかくまったとして、アメリカ軍などがアフガニスタンへ軍事侵攻する。タリバン政権は崩壊。
 政権崩壊後、タリバンの一部の勢力は拠点のあった南部カンダハルを中心に態勢を立て直していく。一方、自由と民主主義の名のもとに介入したアメリカは泥沼にはまっていく。そして、惨めな撤退。ベトナム戦争でイラク戦争で、私たちは何度も同じ姿を見てきたはずだ。どうやって物事を見抜いていくのか。
 タリバンの練習問題を解くために、ペシャワール会代表として、パキスタンやアフガニスタンで医療活動に従事してきた故・中村哲医師の言葉を引用したい。参考までに、中村哲氏はクリスチャンだが「アフガン人は全く気にしない」という。


<日本の報道で一番伝わってこないのが、アフガンの人々の実情です。北部同盟の動きばかりが報道されて、西側が嫌うタリバン政権下の市民の状況が正確に伝わらない。日本メディアは欧米メディアに頼りすぎているのではないか。
 北部同盟はカブールでタリバン以前に乱暴狼藉を働いたのに、今は正式の政権のように扱われている。彼らが自由や民主主義と言うのは、普通のアフガン市民から見るとちゃんちゃらおかしい。カブールの市民は今、米軍の空爆で20人、30人が死んでも驚きません。以前、北部同盟が居座っている間に、内ゲバで市民が1万5000人も死にましたから。
 今もてはやされている北部同盟の故マスード将軍はハザラという一民族の居住区に、大砲や機関銃を雨あられと撃ち込んで犠牲者を出した。カブールの住民の多くは旱魃で農村から逃げてきた難民。22年の内戦で疲れ切っていて、「もう争いごとは嫌だ」と思っている。
 逆に言うと、厭戦気分が今のタリバン支配の根っ子にあると思います。各地域の長老会が話し合ったうえでタリバンを受け入れた。人々を力で抑えられるほどタリバンは強くありません。旧ソ連が10万人も投入して支配できなかった地域です。一方で市民は北部同盟は受け入れないでしょう。市民は武器輸送などでタリバンに協力しています。北部同盟に対しては、昔の悪い印象が非常に強いですから。
 タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。恐怖政治も言論統制もしていない。田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです。
 例えば、女性が学校に行けないという点。女性に学問はいらない、という考えが基調ではあるものの、日本も少し前までそうだったのと同じです。ただ、女性の患者を診るために、女医や助産婦は必要。カブールにいる我々の47人のスタッフのうち女性は12~13人います。当然、彼女たちは学校教育を受けています。
 タリバンは当初過激なお触れを出しましたが、今は少しずつ緩くなっている状態です。例えば、女性が通っている「隠れ学校」。表向きは取り締まるふりをしつつ、実際は黙認している。これも日本では全く知られていない。
 我々の活動については、タリバンは圧力を加えるどころか、むしろ守ってくれる。例えば井戸を掘る際、現地で意図が通じない人がいると、タリバンが間に入って安全を確保してくれているんです。我々のカバー領域はアフガン東部で、福岡県より少し広いくらい。この範囲で1000本の井戸があれば40万人程度は生活ができると思います。
 米国の食料投下は全く役立っていない。日本時間の10月12日夜に聞いた話によると、現地の人は気味悪がって食べずに、集めて焼いたそうです。タリバンが焼いた場合も、民衆が自発的にやった場合もある。例えば干し肉が入っていたら、豚肉の可能性もあるので、イスラム教徒は食べられない。
 本当は小麦を送るのが一番いいんです。今行われていることを総じて言うと、イスラム社会の都合や考えを無視して、西欧社会の都合が優先されている。ものすごい運賃をかけて物を送ったり、自衛隊を出すかどうかで大騒ぎして、結局役に立っていない。
 あちらの慣習法で大切なのが、客人歓待。ビンラディンもいったん客人と認めたからには、米国だろうと敵に客人を渡すのは恥、と考えるんです。
 嘘みたいな話ですが、1億円もあればカブールの人が全部助けられる。我々が今回やる緊急の食料援助プロジェクトで試算すると、1家族10人が3カ月の冬を越すのにたったの6000円で済む。これで急場をしのいでいるうちに、国連などが動き出すはずです。
 こんなふうに死にかけた小さな国を相手に、世界中の強国がよってたかって何を守ろうとしているのでしょうか。テロ対策という議論は、一見、説得力を持ちます。でも我々が守ろうとしているのは本当は何なのか。生命だけなら、仲良くしていれば守れます。
 だから、日本がテロ対策特別措置法を作ったのは非常に心配です。アフガンの人々はとても親日的なのに、新たな敵を作り、何十年か後に禍根を残します。以前は対立を超えてものを見ようとする人もいましたが、グローバリズムの中で粉砕されていく。危険なものを感じます。>
  


Posted by biwap at 09:34

2021年08月08日

障害者を競争させるな



 オリンピックとは、力あるものを競うコンクール。現実世界では不条理な弱肉強食がはびこる中、厳密に定められたルールのもとに公平な競争をするゲームは、たしかに面白い。
 しかし、現実社会で人が生死をさまよう中、仮想空間のゲームを強行することの倒錯。この社会はかくも愚劣なものになってしまったのか。
 コロナ感染を深刻な顔で伝えた数秒後、メダルラッシュにバカ騒ぎする感性。心の底からうすら寒いものを感じてしまう。
 オリンピックは、極限の生産性コンクールにも見える。足が速くても遅くても、人間の価値に変わりはない。でも、足の速さという人間の能力が人間の価値の優劣にすり替わっていく時、怪しげな感動ファシズムが始まる。ゲームはゲームであって、それ以上でも以下でもない。
 生産性がないものは生きる価値がないという優生思想が今も生き続けている。パラリンピックという競争ゲームは、障害者にとっては恐ろしい逆説だ。障害者を競争させるなとシンプルに思ってしまう。
 障害者がスポーツに参加することが当たり前のように広がっていくことと、能力の優劣を競うコンクールとは別物ではないか。ましてや、国の名誉をかけてメダル獲得競争することなど。
 障害のレベルは実に多様である。障害者として一括りにして競わせる土台はない。不公平な前提を見て見ぬふりをして、なぜ美談にしていくのか。
 人は色々な場面で、困難に立ち向かい必死に生きている。それが私たちの生きる社会だ。私たちの身の回りにある一つ一つの小さな感動を汲み取れる感受性こそが大切なことだ。押しつけられた「感動」の「消費者」に成り下がってはいけない。
  


Posted by biwap at 21:12

2021年08月03日

まぼろしの翼


 桑原さんは東京で生まれ、岩手県で育った。1942年、16歳で海軍飛行予科練習生に。45年2月、兵庫・姫路海軍航空隊で白い紙片と封筒を渡され「特攻隊への参加を希望するかどうか書け」と言われた。拒否したかったが「命令のまま」と書いて提出。指名されたのは、その2日後だった。「死ななければいけないんだ」。巨大な力で押しつぶされるような感覚に襲われた。
 沖縄戦が激化した4月、鹿児島・串良基地へ。先に出撃が決まった同級生から「まだ死にたくない。代わってくれ」と迫られた。何も言えなかった。同期生はこわばった笑みを浮かべて飛び立ち、戻らなかった。
 桑原さんにもその時がやってくる。5月3日、翌朝の出撃が決定。800キロ爆弾を積んだ艦上攻撃機に3人で乗り込み、沖縄周辺の米艦に突っ込むため離陸。涙がぼろぼろこぼれた。
 ところが、エンジンから異常音が聞こえ、黒煙が出始めた。種子島の飛行場に爆弾を抱えたまま不時着。串良基地に戻ると、上官から厳しく叱られた。
 1週間後、2度目の出撃。飛行中に油が漏れ、再び種子島に着陸。使える飛行機がなくなり、翌日、解散命令が出た。その後、赴いた台湾で終戦を迎えた。息子と対面した母は泣いて喜んだ。
 「上官は出撃せず、上官に目をかけられている人間は指名されなかった。強者が弱者を矢面に立たせることを実感した」
 元隊員の体験談には特攻を美化したようなものが多いと感じ、84年に「串良ある特攻隊員の回想」を出版、自分が直面した苦悩や絶望をつづった。
 「面汚し」と非難されたが、桑原さんはこう反論する。「勇ましい建前で陶酔することは簡単だ。だが、戦争はそんなもんじゃない」
  (琉球新報 2014.8.16.より)
  


Posted by biwap at 08:45