
2018年09月30日
無言の絵画

長野県上田市にある美術館「無言館(ムゴンカン)」。第二次世界大戦で没した画学生の遺作が集められている。展示される絵画は何も語らず「無言」ではあるが、見る側に多くを語りかけるという意味。
ギタリストの村治佳織と共に「チャリティー朗読コンサート『無言館』よ、いつまでも」を企画した吉永小百合。プライベートでも親しかった女優・樹木希林が、その無言館とつながりを持っていたことを知らずにいた。

「亡くなってから知りました。いつも『(反戦は)私には関係ないわ』という感じでおられたので。改めて凄(スゴ)い人だったなと。希林さんに代わって、しっかりやろうと思っています」と吉永は語る。
2015年、テレビのドキュメンタリー番組で樹木希林は沖縄に行った。辺野古のキャンプ・シュワブ前を訪れた樹木は、炎天下のなか基地移設反対を叫ぶ人びとの言葉に耳を傾けた。沖縄戦から辺野古問題までを熱く語った島袋文子(86)さんの手を握り、「辺野古問題を俳優仲間に広める」と応えたという。

「何げなく、大事な人助けとか平和に対すること、ヒョイとやれちゃう」と、吉永は樹木希林への思いを語る。さらっと、でも心にじわっと来るように、平和の大切さを語れる人。それは「無言の絵画」のように、私たちの心に深く語りかける。
息を吐くように嘘をつく宰相。しかし、「無言の人々」はしっかりとその本質を見つめている。小泉進次郎が三度応援に駆けつけた沖縄知事選。それでも辺野古基地反対の声をつぶすことはできなかった。
Posted by biwap at
23:45
2018年09月19日
これが外交だ


勝手に国民の税金をばらまき、作り笑いすることが外交ではない。それにしても、「韓国が前のめりにならないかが心配」「北朝鮮の宣伝に利用されるだけ」「南北蜜月演出の思惑は何か」等々。救いようのない思考力崩壊メディアこそが、そもそもの元凶なのかもしれない。

共同宣言合意書署名の後、共同記者会見した文大統領は次のように述べた。
「戦争のない韓半島(朝鮮半島)が始まった」「戦争を起こしうるすべての脅威をなくすことで合意した」「南北は初めて非核化について協議した。北朝鮮は東倉里(トンチャンリ)ミサイル発射台を永久閉鎖することを決めた」「米国の相応の措置により、寧辺(ヨンビョン)核施設の永久廃棄のような追加的措置も取っていくことにした」「韓半島の完全な非核化が近くなった。南と北は今後も米国など国際社会と非核化の最終達成のために緊密に協議して協力していくことにした」「韓米両国も大規模合同演習を中断した。開城(ケソン)には南北共同連絡事務所が設置された。常時的に我々の問題を議論できる新たな南北時代が開かれた」「あまりにも夢のようなことが、我々の目の前で確かに履行されている」「南と北は今年中に鉄道と道路連結のための着工式を行う。環境が整い次第、開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の正常化も実現するだろう」

南北の国防相は、軍事分野の合意書に署名した。いかなる場合でも武力を使用しないことで合意。南北は地上、海上、空中をはじめとするあらゆる空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる、一切の敵対行為を全面的に中止する。双方は軍事的衝突を招くあらゆる問題を平和的な方法で協議・解決する。いかなる手段と方法による、攻撃・占領行為をしないことで合意。11月から軍事境界線一帯で、相手側を想定したあらゆる軍事演習を中止することでも合意した。事実上の終戦宣言とも言える。

「(金委員長に)ソウル訪問を要請し、金委員長は近いうちに訪問することにした」「これは特別な事情がなければ年内を意味する」「金委員長のソウル訪問は北の最高指導者の最初の訪問となる」「南北関係で画期的な転機が訪れる」

南北首脳会談には経済人17人が随行。北朝鮮の経済事情と南北経済協力などについて議論した。北側関係者たちは「最高の企業がいらっしゃった」と挨拶。経済人の参加は、南北関係の将来、未来のために必要だという判断から、政府側が要請したもの。国連の対北朝鮮制裁により本格的な南北経済協力は難しい状況だが、鉄道・観光などの議論の具体化、情報通信(IT)など北朝鮮の関心が高いと言われる4次産業などに対する全般的な議論がなされた。

同じ民族が二つに分かれ、殺し合い殺され、憎しみあった。考えれば考えるほど酷いことだと思う。そして、いまなお戦争は休戦状態のまま。日本の植民地支配にも起因する分断と対立の悲劇。そんなことに少しでも思いを馳せれば、今始まろうとしていることの歴史的意義がわかるはず。相手の立場に立ってものを考えることが大切だ。
権謀術数渦巻く外交の世界。何を甘いことと言われるかもしれないが、でも最後は人としての誠実さや信頼の問題ではないのかと思ってしまう。
わずか1年前には考えられなかったことが今確実に進行している。
2018年09月10日
見えないものを見る

大坂なおみさんについては以前に書いたことがある(http://biwap.shiga-saku.net/e1288984.html)。
不安な心を持った少女が、精神的に成長していった姿に驚いた。「手のひら返し」で、大騒ぎし持ち上げるメディアの姿には例の如くウンザリ。「日本人として誇らしい」というコメントに、言いようのない違和感が拭えない。ハワイ大学アメリカ研究学部教授・吉原真里さんの文章がとても面白かったので、以下ブログより引用。
<私は普段テニス(だけでなくスポーツほぼ一般)をほとんど見ないのだけれど、大坂なおみさんについてのニューヨーク・タイムズの記事を少し前に読んで、非常に興味を持っていた。試合前から、報道やインタビューで「日本人初」とやたらと強調される(これはアメリカの報道でも同じ)なか、「日本代表として出場はしていても、父親はハイチ人で、私はハイチも代表しています」と当たり前のようにさらっと言う、その姿にとても好感を持った。今日のUSオープン決勝はさすがに歴史的な組み合わせでは、と思って生で見たら、とんでもない展開に。最後のほうは見ているだけで動揺して、授賞式を見ながらも、見終わってからも、しばらく涙が止まらなかった。
なんと言っても、確実な実力と、あんな状況のなかでも落ち着きと集中力を失わない驚異的な精神力で勝利したのに、素直に喜べない大坂さんが気の毒でならない。それと同時に、不当な警告に抗議したことがさらに警告へとつながり、まる一ゲームも取られてしまうという極端なペナルティで、公正な試合をさせてもらえないという思いを強めるセリーナ・ウィリアムズの、これまでに積もり積もってきた思いと、彼女が背負っている女性アスリートの歴史を思うと、ますます涙が出る。あんな警告がなく、通常の試合をした結果だったら、彼女だって潔く女王の座を笑顔で譲っただろうに。それにしても、FBでの友達の投稿を見る限り(きわめて限定されたサンプルであることは百も承知ですが)、どうもこの試合についての反応が、日本とアメリカでずいぶん違うみたいだなあ、と思っていたのだけど、日本の新聞の文章などを見てちょっとわかった気が…
私はアメリカのテレビ中継を生で見ていたのだけど、日本の報道の形容と私がアメリカのメディアを通して見たものは、かなり違う。アメリカでは、テレビ解説者の試合中とその後のコメントにしても、メディアでの報道にしても、審判の警告は行き過ぎであり、「男性選手だったらもっと酷いことを言ったりしたりしても警告など受けないのに、抗議をしたことで一ゲームも取るのは女性アスリートへのセクシズムである、というウィリアムズには言い分がある」という論調が主流。これは、単なるアメリカ贔屓、ウィリアムズ贔屓ということだけではなく、スポーツにおける女性、とくにマイノリティ女性の位置付けの歴史の背景がある、というのはアトランティック誌の記事などをみるとよくわかる。
それに対して、たとえば朝日新聞の記事では、「主審に対して『私に謝りなさい。あなたはポイントも奪ったから、泥棒』と口汚く罵倒し、1ゲームの剝奪を言い渡された」との記述があるので驚いた。ウィリアムズの発言は、確かにとても強い口調での抗議ではあったけど、「口汚く罵倒」などはしていないし、You owe me an apology.を「私に謝りなさい」という命令調に訳すのも誤解を呼ぶ。日経新聞には「次第にS・ウィリアムズはイライラを爆発させ、警告を受けた」という文があるが、これはプレーが自分の思うとおりにいかないことにイライラしていたような印象を与える。さらに、授賞式での大坂さんについて、「ブーイングの中で始まった優勝インタビューでは『勝ってごめんなさい』とひと言」という文もあるが、これは明らかな誤訳で、彼女は「勝ってごめんなさい」などとは言っていない。I'm sorry it had to end like this.は「このような終わり方になったことは残念です」であって、謝罪ではない。(sorryという単語が出てくると謝罪だと思うのは間違い。たとえば親しい人を亡くした人に、I'm so sorryというのは普通のことで、悲しみやシンパシーや遺憾の意を表現するのにもsorryは使われる。)テニスの試合の報道でもこのようなことがあるのだから、国際情勢についての報道でどれだけこうしたことがあるのかと思うと、恐ろしい気持ちになる。
日本の報道がある程度「日本贔屓」になるのは仕方ないかもしれないし、日本を代表する選手が勝利したのは、私も単純に嬉しい。でも、今日の展開は、日本人とハイチ人の親のもとで主にアメリカで育った日本代表選手と、スポーツの中でもとくに黒人が入りにくかった歴史をもつテニスで女王の座を築いてきたウィリアムズの対戦だったということで、「国」や「国籍」以上に、歴史的にとても意義深いものだったはず。憧れの対戦相手が苦い思いをする試合となってしまった、観客が新しいスターの誕生を祝福するどころかブーイングまでする(もちろん観客がブーイングしていたのは大坂選手に対してだけでなく、審判やそれが象徴する歴史や体制だけれど)結果となってしまった、そのなかで表彰台に上がり涙する大坂さんを見て、肩を抱いて力づけ、観客に「もうブーイングはやめましょう」と言うウィリアムズ。We'll get through this.という彼女が指すweとは、テニス界を率いたり応援する人々であり、日々セクシズムと闘う女性たちやレイシズムと闘うマイノリティたちであり、このような展開で試合に陰りができてしまった大坂さんと自分のことであろう。そのウィリアムズの姿と言葉に、これが本物の女王だと感じると同時に、マイノリティ女性が次世代のマイノリティ女性を勇気づけて世界の頂点に引き上げる絆と連帯を見て、少し救われた気がした。大坂さんはとても賢く成熟した人間なのは明らかなので、落ち着いた頃に、不公平なことには堂々と抗議するウィリアムズへの憧れをまた強くするだろうし、これから長いキャリアを積んで自らもそのようなロールモデルになるだろう、と期待。>
Posted by biwap at
22:06
2018年09月02日
何となく

日本語は、世界の主要言語の中では唯一、起源をめぐって現在も激しい議論が戦わされている。
従来の説は、アジア大陸から紀元前200年ごろに金属製の道具や、コメ・農業技術がもたらされたが、言語発達にはほとんど影響を及ぼさなかったというもの。
これに対し、進化遺伝学の観点から、日本語の方言の多くは約2200年前に朝鮮半島から移住してきた農民たちに由来することが明らかになった。

衛星測定の下部対流圏気温データ、最新版。8月は7月よりも0.13℃低い。2015年のエルニーニョの影響で上昇した気温は、順調に(?)下降中。
熱波についても、地球温暖化によると言えるほど気候システムは単純ではない。気圧の山と谷の位置、地面の水分量、植生など、色々な要素の組み合わせの結果と専門家は言う。

大学の学費の高さ、給付型奨学金の足りなさ。世界での異常な位置。
別に何かを言いたいわけではないが、「少し考えればわかることなのに」と思ってしまうことがあまりにも多いことに驚く。
採算も合わず後始末も出来ないのに、なぜ原発を動かし続けるのか。外交努力もしないで、なぜ無駄な兵器ばかり爆買いするのか。自国民がイヤだと言っているのに、なぜ美しい海を埋め立ててまで「外国の基地」を自国の領土に作るのか。とっくに辞めていなければならない人が、なぜ腐敗する長期政権をそれでも続けるのか。
別に何かを言いたいわけではない。「少しは、考えればいいのに」と思ってしまうだけ。
Posted by biwap at
22:02
│CO2温暖化説への懐疑