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2015年03月31日

凛とした老い

道草百人一首・その52
「誰をかも しる人にせむ 高砂の 松もむかしの 友ならなくに」(藤原興風)【34番】

凛とした老い

 藤原興風(オキカゼ)。官位は低いものの、琴の名手として知られた平安時代の歌人。高砂の松は、長寿を言祝(コトホ)ぐもの。しかし、この歌は淋しい。「私はいったい誰を心の許せる友としたらよいのか。あの千年の高砂の松さえも、昔からの友とはいえないのに」。親しい友が一人二人と去っていく。老いの孤独と悲愁。しかし、くたくたと崩れていくわけではない。「矜持」に似た何かがこの歌の格調を支えている。老いが様々な「喪失」だとしても、いやそうであるからこそ、老いとは「凛(リン)とした老い」でありたいものだ。