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2016年09月25日

シンプルこそ美しい

道草百人一首・その89
「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」(左京大夫顕輔)【79番】

シンプルこそ美しい

 秋風にたなびいている雲の切れ間から、漏れ出てくる月光の、なんという澄みきった明るさだろう。
 藤原顕輔(フジワラノアキスケ)。正三位左京太夫にまで昇進し「左京大夫顕輔」。父・藤原顕季(アキスエ)は摂関家並みの勢いを持ち、歌道の「六条家」を興した人物。藤原定家の父・藤原俊成が興した御子左家(ミコヒダリケ)とはライバル関係。御子左家が芸術至上主義で、「幽玄」かつテクニカルであるのに対して、六条家は無技巧で淡々としたスタイル。
 この歌もこれといった技巧はなく、見て感じたものをシンプルに歌っているだけ。ストレートで格調高い。やはりシンプル・イズ・ベストというべきか。ドロドロよりサラサラの方が、かえって深い余情が伝わるものかもしれない。これと対極なのが、絶大な権力を握った藤原道長の歌。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることの なしと思えば」。
 人間、何事も、こね繰り返し、やり過ぎて、失敗することの方が多いようだ。



Posted by biwap at 06:28 │道草百人一首