› 近江大好きbiwap › 道草百人一首 › 親バカと言われても

2016年09月05日

親バカと言われても

道草百人一首・その87
「契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋も去ぬめり」(藤原基俊)【75番】 

親バカと言われても

 約束してくださったさせも草の恵みの露のようなあなたの言葉を頼みに生きてきました。それなのに、今年の秋もむなしく過ぎさっていくようです。
 恋の恨み節かと思いきや、これがなんとも。
 藤原基俊(モトトシ)。百人一首74番・源俊頼のライバル。和歌や漢詩の才能に優れ、名家の出身だったが、そんなに出世できなった。息子は、興福寺のお坊さん光覚(コウカク)。興福寺は、藤原氏の氏寺。毎年秋に「維摩会(ユイマエ)という重要な法会がある。この法会の中で「維摩経」を講義する講師に抜擢されることは、まさに出世コースに乗ったようなもの。基俊は息子・光覚を是非この名誉ある講師につけてほしいと、前の太政大臣・藤原忠通にたびたび頼んでいた。
 「させも草」は、平安時代の万能薬だったヨモギのこと。「露」は恵みの露という意味。「大丈夫だ、私に任せておけ」、藤原忠通の言葉にすがりつく。待ちわびた秋、その年も息子・光覚は講師に選ばれなかった。「もう、秋も過ぎていくではありませんか」。「親ばか騒動」のお話でした。



Posted by biwap at 06:05 │道草百人一首