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2016年05月11日

闇に浮かぶ炎

道草百人一首・その76
「御垣守 衛士の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ」(大中臣能宣)【49番】

闇に浮かぶ炎

 宮中の諸門を警護する御垣守(ミカキモリ)である衛士(エジ)の燃やす篝火。夜は燃え昼は消えているように、私の心も夜は恋の炎に身を焦がし、昼は消えいるように物思いにふけっている。「もの思ふ」とは、当然「恋情」。しかし、深い漆黒の闇に燃え上がる篝火には、もっと別の情念が感じられる。恋の心情は一つの味付け。この歌の真骨頂は「夜の闇に浮かぶ炎の美しさ」なのかもしれない。
 大中臣能宣(オオナカトミノヨシノブ)。百人一首61番「いにしへの奈良の都の八重桜」伊勢大輔(イセノタイフ)の祖父に当たる。宮中の夜、諸国から集められた「御垣守」の衛士達が、篝火をあかあかと焚いている。「はかなき恋の嘆き」とは、趣(オモムキ)を異にしている。「昼間」が支配する「秩序」。夜の深い闇は、解き放たれた炎の世界へ。



Posted by biwap at 06:22 │道草百人一首