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2015年12月28日

今は懐かしく

道草百人一首・その67
「永らへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき」(藤原清輔朝臣)【84番】

今は懐かしく

 寒い冬が過ぎればまた暖かくなる。「辛いと思っている今この時も、また懐かしく思い出されてくるのだろうか。辛く苦しいと思っていた昔の日々も、今となっては恋しく思い出されるのだから」。人生の一つ一つには、それなりの意味があるように思える。いや、そう思わなければ生きていけないのだ。
 藤原清輔朝臣(キヨスケアソン)。百人一首79番の藤原顕輔(アキスケ)の次男だが、父との確執が彼を苦しめた。才能に恵まれながらも、挫折の多い人生を経験していく。そして、保元平治の動乱。
 どこか諦めに似た慰めのように聞こえるこの歌。でも、生きていくためのこんな知恵が、人生には必要なのかもしれない。
 その清輔も40代を過ぎてからは二条院に深く信頼され、重く用いられた。辛い昔を懐かしく思い出せたのだろうか。



Posted by biwap at 06:31 │道草百人一首