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2015年10月18日

川面の紅葉

道草百人一首・その62
「山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり」(春道列樹)【32番】

川面の紅葉

 この歌の舞台は、京都東山銀閣寺の北から比叡山と如意ヶ嶽を抜け、近江国の大津へ達する「志賀越道」という山道である。山の中の小川に風が掛けた柵(シガラミ)。あれは何かとよく見てみると、流れようとしても流れ切れない紅葉の集まりだった。春道列樹(ハルミチノツラキ)。文章生(大学寮で文章を学ぶ学生)あがりで官吏登用試験に合格し、叙位任官される。壱岐守に任じられたが、着任する前にむなしく死去。歴史の闇の中に消えていった数多(アマタ)の人たち。いつしか集まった「風のかけたるしがらみ」。いつの間にか、その鮮やかな紅葉の色を川面に映し出していた。



Posted by biwap at 06:34 │道草百人一首