› 近江大好きbiwap › 道草百人一首 › 歌の遠近法

2015年10月01日

歌の遠近法

道草百人一首・その61
「高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ」(前中納言匡房)【73番】

歌の遠近法

 大江氏には優れた歌人や学者が多い。大江千里や和泉式部も大江氏の出。おしどり夫婦として知られた赤染衛門(59番)と大江匡衡。その曾孫が作者・大江匡房(オオエノマサフサ)。その才能はピカイチで、天皇の秘書役「蔵人(クロウド)」を務める。朝儀典礼や貴族社会の有職故実に通じ、当代随一の学者として知られるが、「傀儡子記」「遊女記」などの面白い本も書いている。
 「遠く」の高い山の峰の桜が咲いた。その美しい桜が見えなくなるから人里「近い」山の春霞よ、どうか立ち込めないでほしい。上の句の「遠景」と下の句の「近景」を対比させた絵画的な情景がしゃれている。




Posted by biwap at 06:18 │道草百人一首