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2015年08月23日

NOヘイト・キッド

NOヘイト・キッド

 東山紀之。元アイドルグループ「少年隊」のメンバー。妻は女優の木村佳乃。そう言えばNHK大河ドラマ『琉球の風』にも出演していた。1992年、初めて沖縄を訪れた時のことをこう語っている。「十七世紀から今日までの沖縄の歴史をふり返ると、沖縄の悲劇は極端なものだと思う。国内で沖縄ほど虐げられた歴史をもつ場所もない。今日に至るまで人々の思いは見事なほどつぶされてきた。なのに、どうしてこんなに明るく、親切でいられるのか。その優しさの裏には底知れぬ悲しみがあると思った。それを経験している人々の強さと優しさなのだ」
 その眼差しの確かさに驚かされた。広島のコンサート後、訪れた原爆資料館では「僕は韓国人の被爆者の人生に関心がある。差別のなかで、さらにまた差別を受けた人々はどんな人生をどんな人生観で生きたのだろう。演じることが許されるなら、その人生を演じてみたい。伝える必要があると思うからだ」。
 排外デモ、嫌韓本、あふれかえるヘイトスピーチ。そんな中、1冊の本が注目を集めている。東山紀之の自伝エッセイ『カワサキ・キッド』(朝日新聞出版)。神奈川県川崎市のコリアンタウンで過ごした極貧の少年時代。祖父がロシア人という出自。幼い東山と在日コリアン一家の交流。東山は小学校時代から差別への違和感をもち、虐げられた人たちに思いを馳せるようになっていく。
 13歳の時、ジャニーズ合宿所でマイケル・ジャクソンとブラックカルチャーに出逢う。「奴隷として鎖に繋がれてアフリカから連れて来られた人々は、運動不足にならないよう足踏みをさせられた。そこでリズムを刻むのが彼らの唯一の自己表現だった。生き残った人々は道端に落ちていた王冠(栓)を足につけ、リズムを刻んで遊び、ささやかな楽しみにしたという。それがタップ(英語で"栓"の意味)の始まりと言われている。タップダンスとは、虐げられた人々の発散であり、魂の叫びだったのだ」
 少年隊のデビュー、ジャニーズの先輩後輩との思い出、有名芸能人たちとの交遊、そして母親に背負わされる借金地獄。
 「いまは、芸能人というよりも、まず人として、人の親として生きていきたい、と思う」。東山は結婚し2児をもうける。寛容さを失った社会でもっとも必要なもの。それが「優しさ」。たとえば、泣いている子どもを見かけたとき、東山は「ほら、お友達が泣いているよ」と子どもたちに声をかける。「どこの国の子どもだとか、親が誰だとか、何をしているとかは関係ない。大人がそういう態度でいると、子どもたちは知らない相手であれ、あのお友達、大丈夫かな?と言い出すようになる」。
 まずは、大人が他者に対する思いやり、優しさの手本を示す。国籍や親の職業、取り巻く環境など関係ない。子どもたちに対する東山の思いであり、反差別に対する強烈な思いでもある。
 「人は人を差別するときの顔が最も醜いと僕は思っている」

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Posted by biwap at 06:23 │biwap哲学