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2015年08月11日

伊吹のさしも草

道草百人一首・その59
「かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」(藤原実方朝臣)【51番】

伊吹のさしも草

 「かくとだに」の「かく」は「こんなに恋い慕っているとさえ」の意味。「えやはいふ」は「言うことができない」。「いぶき」は掛詞で、「言ふ」と「伊吹山」が掛けられている。「さしも草」はお灸に使われるもぐさのこと。「さしも=これほどまでとは」「知らじな=ご存知ないでしょう」と技巧が散りばめられていく。「こんなにあなたを恋い慕っているとさえ言うことができないのだから、伊吹山のさしも草のように燃える私の恋心を、あなたは知るはずもないのでしょうね」。なかなか情熱的だ。
 藤原実方は、百人一首26番、貞信公・忠平のひ孫。女性にモテモテ。清少納言との恋の噂も。ある時、貴族たちが連れだって花見に出かけた。にわか雨が降り出し大騒ぎに。藤原実方、少しも慌てず「濡れるのなら花の下で」と気取ったが、藤原行成が「バカな奴だ」となじったため喧嘩となる。結局、狼藉の罪で陸奥守に左遷され任地で死去。享年40歳。というわけで、賀茂川の橋の下には実方の亡霊が出現することとなる。



Posted by biwap at 06:16 │道草百人一首