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2014年11月02日

家持の寂廖

道草百人一首・その31
「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける」(中納言家持)【6番】

家持の寂廖

 「万葉集」には約4500首の歌が載せられている。そのうち最多の473首が大伴家持(オオトモノヤカモチ)の歌。万葉集の主撰者とも言われている。冬の夜空を見上げると、天の川に輝く夜空の星が美しい。中国の七夕伝説では、織姫と彦星を七夕の日に逢わせるため、たくさんのかささぎが翼を連ねて橋を作ったとされる。それは、天の川にちらばる霜の白さでもある。寒々とした透き通るような冬の夜がふけていく。家持は繊細で優美で情感あふれる歌を得意とした。「うらうらに照れる春日にひばりあがり心悲しも独りし思へば」には、悲痛な叙情と孤独感が溢れている。名門・大伴氏に生まれ、律令制下の高級官吏として中納言まで昇りつめる。しかし、凄惨な政治闘争の中、陸奥国で没したとされる。没直後に起こった藤原種継暗殺事件。造営中の長岡京は怨霊の地となり、平安京へ場所を移す。事件に関与していたとされた大伴家持。追罰として、埋葬を許されず、官籍からも除名される。藤原氏が権力を掌握していく平安時代、大伴氏は歴史の表舞台から消えていく。



Posted by biwap at 07:03 │道草百人一首