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2014年05月21日

宇治の川霧

道草百人一首・その23
「朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木」(権中納言定頼)【64番】
宇治の川霧

 あたりが徐々に明るくなってきた夜明け。宇治川の川面にかかっていた霧も薄らぎ、川瀬に打ち込まれた網代木が現れてくる。絵の様な情景である。
 瀬田川を下っていくと、喜撰山大橋の辺りで京都府となり、名も宇治川となる。瀬田川沿いの石山寺で、紫式部は源氏物語の構想を練った。光源氏の死後、物語は「宇治十貼」へと展開する。薫と匂宮という対極的な二人に愛され、板ばさみに苦しむ浮舟は自ら死を決意し、宇治川で入水を図る。この物語で有名になった「宇治川の川霧」。平安後期の歌に数多く見られるようになる。
 宇治川を見た藤原定頼の心には、様々な物語の情景が浮かんできたはず。この歌も単純な叙景詩ではなさそうだ。



Posted by biwap at 06:32 │道草百人一首