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2015年12月30日

大晦日に食べるおせち

大晦日に食べるおせち

 「お正月」は、先祖霊としての歳神(トシガミ)を迎え、新たな生命力を更新する年中行事の一つ。おせち料理は元々「年とりの膳」として大晦日に食べるものだった。夜の闇は、来訪する歳神様を迎えるにも都合がよかった。年越しは、神様と人間とが共に食する「神人共食」の場。餅も暮れの30日までについたものを神前に供えておき、それを大晦日に食べた。
 正月の間は、女性は炊事に従事せず、一家の主人が若水を汲み、三が日の食事を作る。束の間の家事からの解放ではなく、元々は「潔斎」の意味合いを持っていたのだ。火や竈などの炊事道具の使用そのものを慎む習慣もあり、重箱などに作り置きする必要があった。
 門松、しめ飾り、鏡餅。いずれも歳神を迎えるための道具立てである。門松は歳神の降りてくる目印。しめ飾りは結界を表示し、清浄なる空間を区切っている。鏡餅は歳神への供え物であり、また鏡になぞらえた御魂(ミタマ)の宿る依代(ヨリシロ)でもある。この鏡餅の餅玉に「年魂」が宿り、家長が家族に「御年魂」「御年玉」として分け与えた。
 伝統行事には、それぞれに意味があった。それがやがて形式化し、因習と化したものもある。何事も本質を知り、自分にとっての意味を見つけ出すことが大切だ。人知を超えた自然の営みに思いを馳せ、新たな年の活力をみなぎらせる。それが正月に込めた、先人の知恵だったのかもしれない。