› 近江大好きbiwap › KOREAへの関心 › 故郷忘じがたく候

2013年09月06日

故郷忘じがたく候

夕方に妻と待ち合わせ、伊丹空港から鹿児島に向かったのは何年前のことでしょう。薩摩焼の里「苗代川(ノシロコ)」。沈寿官さんの窯元を訪ねました。その時に買った黒薩摩のコーヒーカップです。秀吉の朝鮮侵略。拉致された朝鮮人技術者達(製陶・樟脳製造・養蜂・土木測量・医学・刺繍・瓦製造・木綿栽培等)は、見知らぬ地でその技術だけを頼りに生きていきました。陶工だった初代沈寿官は、陶器の原料を薩摩の山野に求め、やがて「薩摩焼」を作り出します。江戸時代、ある旅人の「すでに日本に渡来されてから数代を経給うております。ふるさと朝鮮のことなど思い出されることもございますまい」との問いに、陶工は答えます。「故郷いまだ忘じがたく候」。司馬遼太郎の小説の、心に残る場面です。
故郷忘じがたく候