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2022年04月12日

気持よい正義の罠

気持よい正義の罠

 ジャーナリストの青木理氏が「サンデーモーニング」で、ウクライナに侵攻するロシアに対して、西側諸国が経済制裁など締め付けを厳しくしていく手段に疑問を投げかけた。
 「もちろん、僕もプーチン政権がやったことは決して許されない最大の蛮行だし、戦争犯罪だし、最大の非難に値する」
 「一方で、アメリカを始めとする各国の指導者がものすごく強いトーンで批判をする。そして、ロシアを国際社会から追放していくというだけでいいんだろうか。むしろ、強いトーンで批判すると同時に、止めさせるための外交をやらないと、排除して非難をして、許されないのは当然なんだけど、許されないというと、ある意味で気持ちがいいというか人気取りになってしまう」
 「それより、もう一歩踏み込んで、特にアメリカなんかが、外交努力を尽くしているんだろうかという辺りをきちんて見ていかないと、ロシアも完全にメンツがつぶれて、なかなか停戦や和平という話になっていかない。その辺、もう少し冷静というか冷徹な判断というのを各国の指導者層には求めたい」
 実に控えめで慎重な発言だが、これがマスメディアでのギリギリの「良心」なのかもしれない。凄惨な内ゲバを見てきた私には、「気持ちのよい正義感」はとても苦手だし、臆病になってしまう。

気持よい正義の罠

 米映画監督マイケル・ムーアのインターネット番組での発言はもっとストレートだ。
 「私たちを戦争に引きずりこもうとしている奴が出現した。それは政治家、マスメディア、戦争で何千万、何億ドルともうけようとする軍需企業だ。私たちは、『われわれはウクライナに行かねばならない。われわれは戦争しなければならない』という内側からの誘惑に対して抵抗しなければならないのだ」
 「私はアメリカのテレビがどんな放送を耳や目に押し込んでいるかを確認するとき以外はスイッチを切っている。テレビは毎日、毎日、悲しいニュースばかり流している。道路の死体や子どもたちを見せて、ひどいひどいと刷り込むことであなたの心をむしばんでいく。悲しければ、悲しいほど、大衆洗脳と戦争動員プロパガンダ効果があるのだ」
 「今日、私があなた方にお願いしたいことは抵抗だ。それはプーチンに対してではない。政治家とマスメディアと戦争産業集団が仕組んだ大衆プロパガンダに対してだ。私たちアメリカ人は、たとえウクライナ人のためであっても、戦争に参加してはいけない。私たちは世界中を破滅させる戦争をしてはいけないのだ」
 こんなこと言おうものなら、飼い慣らされた日本では、「ロシアの侵略を正当化するのか」とがなり立てられ、挙句の果てには「陰謀論」だの「フェイクニュース」だのと叩かれる。
 確かに「気持ちのよい正義感」は「もどかしい矛盾に悩む」より、とても「快感」だ。いったん悪者ができると、心置きなく攻撃欲求を満たしてくれる。それでいいのか?
 真に怒るべきものに対して怒る為にも、私たちは知的怠慢による思考停止を厳に戒めるべきである。知識人の真価が今問われている。