› 近江大好きbiwap › 世界史の窓 › 辛口政治批評 › 戦争を煽ったヤツら

2022年04月09日

戦争を煽ったヤツら

戦争を煽ったヤツら

 どう見ても客観性を欠いた扇情的な報道がくり返されている。お馴染みのNHKやワイドショーだけではなく、良心的だったはずの人たちまでもが。
 第二次世界大戦、ナチス・ドイツはソ連に侵攻。ウクライナ西部ではソ連に反感を抱く人々がナチス・ドイツに協力。その一つが「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」。指導者ステパン・バンデラは、強烈な反ユダヤ主義者、反共主義者だった。ナチスと極右ウクライナ民兵によって多くのユダヤ人が虐殺された。

戦争を煽ったヤツら

 第二次大戦後、米ソ冷戦構造が激化していく中、アメリカ諜報機関CIAはステパン・バンデラや極右民族主義者らを匿い、逃亡させた。対ソ連の駒として利用するため。彼らは後に「ネオナチ」として姿を現すことになる。

戦争を煽ったヤツら

 ソ連崩壊後、ウクライナはソビエト連邦から独立。旧ソ連の3分の1の産業部門を担い、経済発展が期待された。
 しかし、旧ソ連圏との経済関係は崩れ、無謀な経済改革がウクライナの荒廃をもたらした。経済は3分の1まで落ち込み、欧州の最貧国にまで転落した。
 石油や天然ガスはあるが、開発資金がない。そんな中、ウクライナの油田開発に投資したのがブリズマ・ホールディングス。その取締役の一人がバイデン米大統領の息子ハンター・バイデンだった。
 ロシアや旧ソ連領だった国々では、乱暴な民営化と国有財産の強奪が始まった。西側の資本も強欲に入り込んで来た。「オリガルヒ(新興財閥)」なる成り上がり者があらわれ、富を収奪していった。民衆の生活水準はたちまち低下。権力構造は腐敗し、混迷状況がもたらされた。

戦争を煽ったヤツら

 2004年大統領選では欧米派のユシチェンコと親ロ派のヤヌコヴィッチが争った。ユシチェンコの妻は元米国務省職員。結果的にヤヌコヴィッチが当選するが、それに納得しない群衆が首都キエフにて「オレンジ革命?」という名の暴動を起こす。選挙のやり直しをへて、ユシチェンコが当選。
 ユシチェンコは、演説の中でこう言った。「ウクライナの愛国者たちが待ち望んでいたことを言いたい。ウクライナ独立のため勇敢な行動をしたステパン・バンデラ氏に、私は国家勲章とウクライナ英雄の地位を与えます」

戦争を煽ったヤツら

 ユシチェンコ任期終了後の2010年の大統領選では、ヤヌコヴィッチが当選。ステパン・バンデラの英雄称号を廃止した。しかし、欧州との連合協定の締結を延期したことを契機に、キエフで大規模デモが起こり暴徒化していく。選挙で合法的に選ばれたはずの大統領ヤヌコヴィッチは、ロシアに命からがら逃亡する(「マイダン革命」という名のクーデター)。
 2014年春以後、ロシア系住民が多いウクライナ東部では、このクーデターによって樹立されたキエフ政府に反対するデモが活発になる。ドネツク人民共和国が宣言されるまでに至る。キエフ政府はドネツクに対して反テロ作戦と称して軍事攻撃を加えていった。8年間で1万4000人の住民が「自分たちの政府」から爆撃をくらい、死んでいった。「ドネツク可哀想」などという国際メディアはいなかった。

戦争を煽ったヤツら

 東部の住民たちの行動に反応して南部のオデッサでも反政府運動が起こった。それに対して極右勢力がオデッサに乗り込んで武力弾圧。抗議デモ参加者を焼き殺すなどした(「オデッサの悲劇」2014年5月)。

戦争を煽ったヤツら

 2014年「マイダン革命」で成立した親欧米政権は、暴動で大暴れした極右勢力についてとり締まるどころか、むしろ全員に恩赦を与え無罪放免にした。
 次のゼレンスキーはドンバスでの戦争を終わらせると約束して大統領に当選したが、ロシア系住民に対する武力攻撃はやむことがなかった。さらに、NATO加盟まで踏み込んで、ロシアとの衝突に発展していく。

戦争を煽ったヤツら

 ウクライナ軍の中心となっているアゾフ大隊(連隊)。「マイダン革命」直後の2014年5月にウクライナ南部マリウポリに設立された民兵組織だ。卍をアレンジした隊章に見られるように、ナチズムを継承した過激な民族主義を掲げる「ならず者集団」。
 親ロシア地域で政権に反抗する住民を弾圧。ドンバス紛争でもロシア系住民の虐殺に関与してきた。この指揮権をウクライナ政府がどれだけ握っているのかも定かではない。
 アゾフ大隊のスポンサーとして知られるのが、ソ連崩壊後に公有財産を私物化し、鉄鋼・金融・メディアを支配したウクライナ産業界の「新興財閥(オリガルヒ)」イーホル・コロモイスキー(現在米国に滞在)。1000万㌦をかけて創設した私兵部隊のドニプロ大隊を持ち、アゾフ、アイダール、ドンバスなどの民兵団に資金を提供していた。コロモイスキーが所有するテレビ局で番組を作ってきたのが、お笑いタレント・ゼレンスキー現大統領。
 これらの民兵組織には、外国人志願兵が多い。失業者などが報酬を求めてなだれ込み、国軍以上の規模に膨れあがった。そこにイラクやアフガンで大量殺戮をおこなった米国の民間軍事会社「ブラック・ウォーター」などが入り込み、親ロシア派掃討戦の主力となっている。

戦争を煽ったヤツら

 東部2州の「特別自治」を認めて停戦するとしたミンスク合意(2014年9月)後も、米国は対戦車ミサイルなどを大量にウクライナに供与。さらに1000人規模の軍事顧問をウクライナに派遣し、軍事訓練、武器の供給、指揮系統に至るまでとり仕切っている。

戦争を煽ったヤツら

 「ネオナチ」どもを囲い、反ロシアを扇動してきたのがアメリカだった。メディアは「ウクライナ可哀想」「悪のプーチン」一色に染まっている。侵略が間違っていることなど自明のことだ。だが、それを盾に「背景を考える必要などない」「それは侵略を正当化するものだ」という正義感が一切の異論を封じ込めている。戦争前の様な、何だか気持ちの悪い大政翼賛会的状況だ。
 「聖戦」という名の「戦争の泥沼」にズルズルとはまり込む前に、冷静な判断と戦争への想像力を働かせよう。戦争を煽ったヤツら前へ出てこい。