
2018年10月26日
コーヒールンバ


2015年2月、UCCコーヒー博物館で買った「コーヒーの木」。今は観葉植物として部屋を飾っている。

9世紀エチオピア。ヤギ飼いの少年は、ヤギが興奮して飛び跳ねることに気づいた。山腹の木に実る赤い実がその原因だった。アフリカ東岸を原産地とするこの木の実。アラビア半島を経由しイスラム世界全体に広がった。不眠不休で修業を積むイスラム修道者たちは、眠らないためにこの魔法の飲み物「コーヒー」を飲んだ。
やがてコーヒーハウスは、ヨーロッパの社交場となる。イギリスでは紅茶がコーヒーを駆逐するが、大陸では異国情緒溢れるこの飲み物に西欧人は衝撃を受けた。「悪魔のように黒く、地獄のように熱い、天使のように清純で、恋のように甘い」(タレーラン)。
しかし、コーヒーの赤い実は黒人奴隷の血を吸っていた。中南米へコーヒー豆が持ち込まれ、大農園が開発された。その労働力として酷使されたのがアフリカの奴隷たち。アフリカ大陸から船に乗せられ2ヵ月の航海。不衛生な船底に手足を縛られた状態で入れられ、「物」として扱われた。大西洋海底には、この航海の途中に捨てられたアフリカ人の遺骨が100万体も沈んでいると言われる。

コーヒーには主な種類が二つある。一つはアラビカ種。ジャマイカのブルーマウンテンなど、世界各地の有名な産地の名が知られている。現在生産量の7~8割はアラビカ種である。風味とコクに優れ、レギュラーコーヒー用として普及。
それに対して酸味がなく苦味が強いロブスタ種。味が劣るとされ、ブレンドされたり、インスタント・コーヒーの原料として用いられる。ベトナムではこのロブスタ種が主力となっている。アラビカ種は施肥や剪定などに手間がかかるのに対し、ロブスタ種はしばらく放っておいても実を着ける。病気にも強いので、農薬を撒く必要性も少ない。この簡単さが、ベトナムでコーヒーが急速に広がっていった原因の一つ。
では、ロブスタ種はそんなにもまずい安物コーヒーなのか?原生種に近いロブスタ種には独特の魅力がある。ブラックで飲んでも、その苦さとコクと香りはヤミつきになるものがある。

コーヒーの木は寒さと直射日光が大の苦手。4~5年経つと梅雨の頃にジャスミンのような白い花が咲き、秋に結んだ青い実は、やがて赤から紫紅色へと完熟。コーヒーチェリーと呼ばれる甘い実になるそうだ。
我が家に、コーヒーチェリーの訪れる日は来るのだろうか?

Posted by biwap at 09:18