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2017年10月09日

甘い音色のギタリスト

甘い音色のギタリスト

 一本のギター。メロディ・和音そしてベースまでが奏でられ、時には打楽器にも。それはまるで「小さなオーケストラ」。クラシック、ボサノバ、ポップス、ジャズ、そしてフォークも。
 1960年代の若者たち。そんなに裕福な家庭でない限り、ピアノを買うお金もスペースもなかった。だから、ギターに走った。高校時代に、たまたま貰ったギター。コードをジャーンとやったのが始まり。人生とは「偶然」以外の何物でもない。それを「出会い」とするかどうかが、その人の「人生」なのだ。
 そんな訳でダラダラとギターと付き合ってきた。数年前、京都の十字屋で初めて演奏を聴いたギタリスト・朴葵姫(パクキュヒ)。10月7日、京都府民ホールでのリサイタルは、私の課題曲オンパレードでとても満足。飾り気のない素直な演奏は、心の中に素直に入り込んできた。

甘い音色のギタリスト

 朴葵姫(パク・キュヒ)。1985年韓国仁川生まれ。生後間もなく来日し、3歳からギターを始める。5歳で韓国に戻るが、その後韓国と日本で活動。2004年、東京音楽大学入学。2007年、オーストリア・ウィーン国立音楽大学に留学。2014年、首席で卒業。主要ギター・コンクールでの優勝・受賞が続く。
 小さな体、小さな手。「小さな手のコンプレックスを克服するために、一日13時間以上練習した」という。「小指が特に小さくミスをするため、テクニックが不足していました。ありとあらゆる神経と時間をすべて注ぎ込んで弱点を補強し、他のことを見つけようとしました。女性性と繊細さを際立たせました。2007年、オーストリアのウィーン国立音大に留学した後、一日中バナナとダークチョコレートだけ食べて練習しました」
 心構えがコンクールの勝敗を左右する。賞金を狙ったり不純な目的のために出て行けば演奏がうまくできない。「最善を尽くして謙虚に演奏すると、少しの間違いがあっても優勝することができます。2012年、スペイン・アルハンブラ国際ギターコンクール本選では、突然思い出せなくなり演奏を一時停止したのに優勝したんです」
 「弦自体が違います。フォークギターは鉄線であり、硬くて手で弾くことができません。クラシックギターの弦はナイロン素材です。フォークギターはカランカランと金属音が出るのに対し、クラシックギターは暖かく、さまざまな音色を出すことができます。敏感な楽器なので、爪に小さなキズができても、雑音が出ます。爪を磨き続けなければなりません」
 3歳の時に子供用ギターで演奏を始めた。趣味でギターを習っていた母に付いて回った。「ギターは人の声の大きさに最も近い楽器です。一日中、聞いても飽きることなく、耳障りになりません。赤ちゃんを抱くように大切にギターを抱えて演奏する、その感覚が好きです。楽器と一体になっている感じです」
 ギターは孤独で大変な時、彼女の友人だった。「中学校の時いじめを受けた」「その時、ギターが私の心の傷を癒した」

甘い音色のギタリスト

 ある女性のブログ記事から。
<私の母は、70ウン歳になりました。お婆ちゃんになっても可愛らしい母ですが、朴葵姫(パク・キュヒ)さんも、そんなタイプかなぁと思います。
 ニコッと笑うとこっちまで思わず微笑んでしまう様な可愛らしい女性です。
 音の美しさは評判通りかそれ以上なのに、その音が紡ぎだす音楽は完全にコントロールされていて、主張も強くまったくブレがない。
 そんなしっかりした演奏とふんわりと柔らかい見かけとのギャップも魅力のひとつかも知れませんね。
 アンコールの前に「こんなに沢山の人の前で演奏したのは初めて」とMCしていましたがこれからもどんどん演奏して欲しいです。
 村治佳織さんが『綺麗なお姉さんタイプ』だとしたら、パク・キュヒさんは『愛らしい妹タイプ』でしょうか。
 村治さんの人気(集客力)はギター界で文句なくピカイチですが、1000人以上入る大ホールでマイク使用での演奏会を多くしている現状を思うと、パクさんにも同じように人気が出て欲しいものの、人気が出ても今のスタイルのままで『ギターの生の音』を伝てくれる演奏家になって欲しいと思うのはワガママでしょうか?
 華もあり、実力もある。これはもう『使命』と覚悟して(笑)クラシックギターをもっともっと広めて深めて欲しいと思います。>