2017年05月14日
札束より花束を

5月12日、「国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会」は慰安婦問題に関する2015年末の日韓合意について、合意の見直しを勧告。元慰安婦に対する「補償や名誉回復、再発防止の保証などが十分ではない」とした。
2015年の日韓合意。日本政府は韓国政府が設立する財団に10億円を拠出。韓国政府はソウルの日本大使館前の少女像について関連団体と協議したうえで適切に解決されるよう努力する。これにより、日韓政府は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」を確認するという内容。
これ以上、日韓関係を悪化させないための苦心作ともいえる。しかし、「朴大統領に安倍首相が心からおわびと反省の気持ちを表明」という伝聞が説明されただけで、安倍首相自身の口から公の場で「元慰安婦たちへのおわびと反省」が具体的に語られることはなかった。元慰安婦たちが求めていた首相による「おわびの手紙」に対し、安倍首相は国会答弁で「毛頭考えていない」と全否定。
「心からのおわびと反省の気持ち」は“見せかけ”のものにしか見えず、カネですべてを解決しようとする姿勢に不信感を持たれることになる。特に当事者である元慰安婦の心は置き去りにされたままだ。
ムン・ジェイン大統領は安倍首相との電話会談で、「国民の大多数が、心情的に合意を受け入れられないのが現実だ」と述べた。「時間がかかる」という言い方に、懐の深さを感じた。そんな大統領に「反日」のレッテルが貼られる。
少女像の製作者、キム・ソギョン氏とキム・ウンソン氏夫妻。ベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺を正面から受け止め、謝罪と反省の意味を込めた「ベトナムのピエタ像」を制作。少女像は決して“反日の象徴”ではなく、戦争を憎み、犠牲者を悼み、平和を希求する市民の思いが込められている。正式名称を「平和の碑」という。
カネでカタをつける。そう受け止められることが一番まずいことなのに、「少女像撤去」の大合唱を挙国一致でやるこの国の破廉恥さ。「非国民」という言葉がよみがえりつつあるこの時代、真の愛国者とは「信義と品性」を守り抜く人間のことだと強く反論したい。