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2016年11月10日

道化師たちの踊り

道化師たちの踊り

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道化師たちの踊り

道化師たちの踊り

 「希望が打ちくだかれた時に起るもう一つの、そしてはるかに恐ろしい結果は、破壊性と暴力である」(E・フロム『希望の革命』)
 まさかが、また現実になった。例によって浮ついた論評が相次ぐが、新聞を読まない人たちが選んだ大統領というコメントは面白かった。確かに反知性主義という名の妖怪が跋扈(バッコ)している。
 橋下氏との共通点を問われた松井氏が、「たてまえ」ではなく「本音」で語るところはそうでしょうと答えていた。「たてまえ」という倫理の防御線が外され、剥き出しの「本音」が迸(ホトバシ)ることには強い危機感を感じる。まるで、ヘイト言説満ち溢れるネット空間がそのまま表の世界へ出てきたようなものだ。その最も醜悪なものをアメリカ大統領選挙に見た。いやそれは、よその国の話ではない。
 米軍が撤退しようと、TPPから撤退しようと、そんなことが問題ではない。民主主義そのものが問われている。それに言及できないほど、メディアの知性が衰退しているとは思いたくない。
 政治学の用語で「床屋政談のシニシズム」というのがある。理論的裏づけのない、感情的で無責任な政治談議のことを「床屋政談」という。少し真面目なことを言うと、おっさんたちがそれを声高にこき落とす。後に残るのは何か。
 地に足のつかない浮遊するポピュリズム(大衆迎合主義)。それは、希望に絶望したニヒリズムの変形。絶望に絶望し、希望を紡ぎ出す力を持たなければ。多数に迎合することなく、まず知的道徳的ヘゲモニーを構築すること。それが現代の課題だ。