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2014年05月27日

母には頼らず

道草百人一首・その24
「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立」(小式部内侍)【60番】

母には頼らず

 小式部内侍(コシキブノナイシ)は、和泉式部の娘。もともと天才的な歌人なのだが、あまりに上手なので、母の和泉式部が代作しているのではないかと噂が出るほど。ある時、京都で歌会が開催された。出場していた小式部内侍に、藤原定頼【64番】がいじわるな質問をした。「もうお母さんの所に使いを出しましたか?」。母・和泉式部は、再婚した夫の任国・丹後にいた。代作疑惑をからかわれ、即興で歌ったのがこの歌。
 「大江山を越え、行く野の道(生野の道)は遠すぎて、天橋立の地なんて踏んだこともありません(文も見ず)」。掛詞や縁語、地名が巧みに利用されたこの歌の完成度は凄まじく、世間のウワサも吹っ飛ばしてしまった。お見事。藤原定頼とは、後に恋仲になったとの噂も。しかし、この天才少女も25歳という若さで死去。母・和泉式部よりも早い死だった。