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2013年12月29日

心の中の自由

心の中の自由
自衛隊員の妻だった中谷康子さん。夫は公務中に事故死する。自衛隊は夫の霊を山口県護国神社に合祀した。クリスチャンだった中谷さんは、これを拒否し、「自衛官合祀拒否訴訟」が起こる。戦前、軍人が戦死した場合には靖国神社に合祀された。靖国神社は戦争犠牲者一般を祀るものではない。幕末に創建されたこの神社は、天皇のために戦い死んだ軍人を「英霊」として祀っている。だから、西郷隆盛は祀られていない。広島・長崎の被爆者も、沖縄戦の犠牲者も、空襲で死んでいった人たちも、侵略の犠牲になった人たちも。戦後、靖国神社は一宗教法人となるが、殉職した自衛隊員は出身地にある護国神社に合祀される。愛する人の死をどのような形で悼むかは、その個人の人格権であるはず。しかし、最高裁判決は中谷さんの訴えを退けた。多数意見に抗した伊藤正己裁判官の反対意見を引用する。「私は、基本的人権、特に精神的自由にかかわる問題を考える場合に少数者の保護という視点に立つことが必要であり、特に司法の場においてそれが要求されると考えている。多数支配を前提とする民主制にあっても、基本的人権として多数の意思をもっても奪うことのできない利益を守ることが要請されるのはこのためである。」