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2016年07月26日

NHK解体劇場

NHK解体劇場

 『NHKは完全にアンダーコントロールされています。安心して政府広報放送をお楽しみください』
 
 かねてからNHKを反日的な偏向報道と批判してきた「安倍晋三と仲間たち」。2013年、NHK経営委員に「仲間たち」4人を起用。その一人。
 「すごくいいことを思いついた!もし他国が日本に攻めてきたら、9条教の信者を前線に送り出す。そして他国の軍隊の前に立ち、『こっちには9条があるぞ!立ち去れ!』と叫んでもらう。もし、9条の威力が本物なら、そこで戦争は終わる。世界は奇跡を目の当たりにして、人類の歴史は変わる」(百田尚樹)
 他に、埼玉大名誉教授・長谷川三千子、海陽学園校長・中島尚正、JT顧問・本田勝彦。
 百田氏の作品は首相も愛読、雑誌で対談するなど親交も深い。本田氏は首相の元家庭教師。長谷川氏はウルトラ保守派論客。中島氏が校長を務める海陽学園は、首相に近いJR東海会長の葛西敬之氏が創設。あまりに露骨な人事に、「自らが信頼し、評価している方にお願いするのはある意味では当然だ」と官邸は開き直った。
 NHK人事の裏に安倍ブレーン・葛西敬之氏の存在。葛西氏は、経済人団体「四季の会」のリーダー。2007年に経営委員長に任命された古森氏も、2013年の本田勝彦氏も、「四季の会」のメンバー。葛西氏は、戦前のように、日本を率いるエリートを養成する学校を創るべきだとして海陽学園を創設。その海陽学園の校長が中島尚正氏。
 この人事案の前、安倍首相は葛西敬之氏とゴルフ。産経新聞は「NHK幹部によると、葛西氏は、最近、NHKの報道姿勢への批判を幹部や経営委員の一部に伝えているといい、今回の経営委員人事は会長交代に向けた布石との見方も出ている」と正直に書いている。
 こうして2014年、NHK新会長に籾井勝人氏就任。「私の任務はボルトやナットを締め直すこと。放送法を順守しながらいろいろな課題に取り組んでいく」「(従軍慰安婦について)戦争をしているどこの国にもあった」「政府が右ということを左というわけにはいかない」と述べた。
 籾井勝人、福岡県出身。三井物産に入社し、主に鉄鋼畑を歩んだ。安倍首相の盟友・甘利経済再生担当大臣とは旧知の仲。安倍陣営の意向を汲んだ放送運営が始まり、番組制作のスタッフにも有形無形の影響力や圧力が及んでいく。
 「安倍晋三と仲間たち」は、NHKの最高意思決定機関である経営委員会に自分たちと同じ超保守的な思想の持つ主を次々と送り込み、ついには「政府が右ということを左というわけにはいかない」と言い放つ人物をNHK会長に据えた。かくして、NHKは政府広報放送と化した。しかし、現実はまだまだそんな甘いものではなかった。続編。
 2016年6月29日、朝日新聞。「NHKの経営委員会は28日、新たな経営委員長にJR九州相談役の石原進氏を選んだ。来年1月に任期満了を迎えるNHK会長の選考がこの夏から本格化するほか、巨額の費用を見込む東京・渋谷の放送センター建て替えなどの経営課題を抱えるNHK。そうした決定に大きな影響力を持つ今回の委員長選びにあたって、経営委は政権・与党との円滑な意思疎通を重視したと見られる」
 NHK経営委員長に就任した石原進氏。改憲を目指す超保守団体「日本会議」の地方機関「日本会議福岡」の名誉顧問。原子力利用を促進する「原子力国民会議」の共同代表でもある。
 思わず言葉を失いそうになるが、NHKの中にも「ジャーナリストとしての使命や意地」は、きっとあるはず。権力や利権から独立した真の公共放送の姿に立ち返ってほしい。NHK受信料は暴走権力への寄付金ではないのだ。