2015年09月21日
日本映画連戦連敗

原発タブーを打ち破る衝撃作。20年前すでに「フクシマ」を予言。映像化絶対不可能といわれた禁断の原作。そんな期待が大きかっただけに後味の悪さだけが残った作品だった。
見終わった人は果たして何を感じただろうか。ハラハラドキドキのサスペンス、そして家族愛に感動? 原発反対運動は極端に戯画化され、社会批判も中途半端。犯人の行動や心理にも全く説得力がない。蛇足的なエピローグはサイアク。結局、最後に感じた感想は、原発を材料にした「大型商業映画」。
堀江貴文(ホリエモン)の感想が興味深い。「原発推進派は原発がゼロリスクでなく、時には事故が起きることを正直に告白した上で有用性を主張すべきだし、反対派は感情論で何でも反対、どんな手段を用いても阻止すべき的な短絡的な動きをしてはならないよ、という戒めの映画」。正直というか何というか、それほどつまらない映画だということを語ってしまっている。
原発問題に関しては、賛成でも反対でもなく、あくまでニュートラルに描いているという。特定の主張を入れないことは良いことのようで、そこに後味の悪い欺瞞を感じてしまうのはなぜだろう。映画の中に、「原発問題を真剣に考えようともせず、どこか他人事のようにふるまっている大多数の国民への警鐘」という作者のメッセージが語られるのだが、その警鐘は作者自身に向けられるべきではないか。
このところ見た日本映画はいずれも連戦連敗。技巧に走る薄っぺらさだけが目立つ。深い人間観や哲学や思考に裏打ちされていなければ、結局何も伝えられない。まさか上から目線で観客を馬鹿にしているわけではないだろうが、真剣勝負をして見事勝利してほしい。
Posted by biwap at 06:03
│芸術と人間