2015年07月06日
咲き始めたアオバナ

夏の日の早朝。ツユクサに似た大型の青い花が開花する。草津市の花「あおばな」。アオバナの青色色素は、水溶性で色落ちしやすい。下絵を描く時の顔料として用いる。下絵の色は最終的には完全に抜け落ち、仕上がった染め物には残らない。染織工芸、特に京友禅で用いられた。

花弁だけを摘み取り、絞りとる。できた青い汁を美濃紙に刷毛で塗り、天日で乾かす。青というよりもむしろ黒い紙が、青花紙として出荷される。これを水に溶かし、薄青くなった顔料が下絵付けに用いられた。
アオバナは、江戸時代中期頃から草津を中心に商品作物として栽培されてきた。しかし早朝に開花した花はその日の昼頃には萎んでしまう。限られた時間の中、小さな花びらを一つ一つ丹念に摘み取らなければならない。搾り取った汁はその日のうちに使わなければ変質してしまう。酷暑の中の過酷な作業からアオバナは「地獄花」とも呼ばれた。半面現金収入も大きく、「あおばな御殿」と呼ばれる豪邸を建てた人もある。その人たちにとっては「小判花」であった。
着物生産が盛んだった頃、沢山の仲買人が競い合って青花紙を買いに来た。戦後、化学薬品で青花に替わるものが開発された。「化学青花」と呼ばれ、安価で工程も簡単。「本青花」と呼ばれた草津産の青花紙は駆逐されていった。

2000年頃から、アオバナに糖質吸収を妨げる成分があるという研究成果が発表さる。アオバナを使ったお茶や乾燥粉末などの健康食品開発が行われていく。1981年、草津市の花に制定されたアオバナ。再び咲き誇る日がやってくる。街道の分岐点「草津宿」。日本一長い旧河川敷緑地公園。「草津ルネサンス」がもうすぐそこに。

Posted by biwap at 06:13
│近江大好き