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2014年10月08日

ナチスが攻撃した時

ナチスが攻撃した時
 書店では嫌韓・反中の本が所狭しと並べられ、ネットや雑誌では「売国奴」「国賊」という言葉が飛び交う。「週刊文春」に「慰安婦捏造朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」の記事。以後、北星学園大に非常勤講師を務める元朝日新聞記者の退職を求める脅迫状が届く。電話やメール、ファクス、手紙が大学や教職員あてにも数多く届き、大学周辺では政治団体などによるビラまきや街宣活動も始まった。インターネット上では、元記者の実名を挙げ、「国賊」「反日」などと憎悪をあおる言葉で個人攻撃が繰り返され、その矛先は家族にも向かった。自宅に面識のない人物から嫌がらせ電話がかかるようになった。ネットに公開していない自宅の電話番号が掲載されていた。高校生の長女の写真も実名入りでネット上にさらされた。「自殺するまで追い込むしかない」「日本から、出ていってほしい」と書き込まれた。長男の同級生が「同姓」という理由で長男と間違われ、ネット上で「売国奴のガキ」と中傷された。嫌がらせや中傷は今もやまない。
 この元記者は、1991年8月11日付朝刊で韓国の元慰安婦の証言を他紙に先んじて報じた。慰安婦を支援する「韓国挺身隊問題対策協議会」に初めて体験を明かしたという内容。朝日新聞は2014年8月5日付朝刊で、記事の中で「慰安婦」と「女子挺身隊」を誤用したことを認めたうえで、記事に意図的なねじ曲げはなく、縁戚関係を利用した特別な情報提供もなかったことを検証している。この元記者は、1987年5月の「朝日新聞阪神支局襲撃事件」で、散弾銃で殺害された当時28歳の記者と同期である。記事を捏造した事実は断じてないという。
 札幌市で長い歴史を誇る北星学園大学。キリスト教に基づく人格教育を掲げ、「異質なものを重んじ、内外のあらゆる人を隣人と見る開かれた人間」を教育理念にしている。大学への攻撃が強まる中、学者や弁護士、ジャーナリストらが10月6日、同大を支援する「負けるな北星!の会」を結成した。作家の池澤夏樹、森村誠一、学者の山口二郎、中島岳志、内田樹、野中広務元自民党幹事長、上田文雄・札幌市長、精神科医の香山リカら約400人が賛同している。
 以前に紹介したドイツの牧師マルティン・ニーメラーの言葉を再度引用する。「ナチ党が共産主義を攻撃したとき、私は多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。ついでナチ党は社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者ではなかったから何もしなかった。ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した・・・しかし、それは遅すぎた。」