殺すな!

biwap

2023年04月15日 23:48


 権威に寄りかかり、自分の頭で考えないのはリベラル派も同じだ。ここで停戦すればロシアの侵略を追認することになるという。制裁し糾弾すればロシアは撤退するのか? 撤退するまで正義(?)の戦争を続けろと言うのか?
 4月5日、国際政治や紛争問題の専門家を中心とした有志が、G7首脳に向けてウクライナ戦争の停戦とアジアで戦争の火種を広げないことを求める声明を発表した。彼らは昨年から異端を引き受けてきた。でも、ここに来て少しずつ変化が起こりつつある。誰が何を言ってきたのか、何を言っているのか、忘れずにしっかりと心に刻んでおこう。昔の「べ平連(ベトナムに平和を市民連合)」のコピーをもう一度。「殺すな!」
 会見の中から、羽場久美子氏のメディア批判をみてみたい。


 私たちは、ロシアとウクライナの戦争が始まった当初から、即時停戦と話し合いによる問題解決を訴えてきた。ここでは3点について話したい。
 一つ目は、停戦とは、どちらかの敗北であったり、勝利ではないということだ。戦争の停止である。人の命を救うことであり、平和な世界秩序を構築することだ。
 二つ目は、主にメディアの方々に訴える。戦争時においては報道の公平さが極めて欠如する。まさに今、日本の報道が戦争前のようになっていることをたいへん憂う。多様なファクツ(事実)にもとづく多様な報道は、戦争時にこそ必要であり、それが私たちが正しく判断するうえでの拠り所になる。一方だけの情報は、戦争賛美に奉仕することになる。メディアの責任は、われわれ研究者の自由な発言とともに極めて重要だ。
 三つ目は、現在、世界の3分の2が停戦を要求し、殺戮の停止を要求しているという事実だ。そして今後の世界の潮流はどこにあるのか? 21世紀後半の世界を牽引していくのは誰なのか? それはアメリカなのか? ということを、事実をもとに考えたい。


  ミサイルを撃ち込んで応戦するウクライナ軍

 連日、いかにロシアの悪事によってウクライナの人々が苦しんでいるかということが新聞やTVで強調され、その論調がSNSにも溢れている。それに対して少しでも反論をすると、「ウクライナの人々を蹂躙し、ロシアの勝利を助けている」「恥を知れ」といったような荒唐無稽なバッシングを受ける。公的メディアのNHK、あらゆる民放でも客観的で公正な報道は影を潜め、戦争継続を支持する方々が、明らかに間違った発言であるにもかかわらず前面に出てきている。
 すでに国民の多くは、この事態のおかしさに気付いている。だからこそ、私たちは昨年だけでも50回以上もいろいろな場所で講演に呼ばれ、聴衆からは「メディアでわからないことが事実をもってわかった」と驚かれる。
 戦争継続により、1年間でロシア兵が20万人死亡(イギリス軍部発表)、ウクライナ側で8000人が死亡(ウクライナ政府発表)したといわれる。この情報を信じるなら、ロシア側の犠牲も甚大であり、歴然とした力の差を感じる。だが、それはウクライナの果敢な戦いによるものではない。西側とりわけ米国からの大量の武器の流入によるものであり、それによってロシア兵だけでなく東部のロシア系ウクライナ人が大量に殺されているという事実がある。これによってアメリカの軍事産業は空前の利益を得ている関係だ。
 東部には3割近くロシア語話者がいる。2014年のマイダン革命で、ウクライナではロシア語の使用が禁止された。これは国連からも、EUからも国際法違反として批判されてきたことだ。だが現下のメディア報道では、そのような事実に触れることなく、いかにロシアが一方的にウクライナを蹂躙し、いかにロシアによって一般の民家が破壊されているかという情報だけが流される。東部での戦闘による住民への被害は、戦争である以上、ロシアだけでなく双方の戦闘行為によるものであることは明らかであるにもかかわらず、その視点はみられない。これは「戦時報道」であり、ロシアのみを非難することで、国際社会がやるべき作業を覆い隠している。メディアは多様な事実の報道に撤し、それに対する攻撃や筋違いな批判については果敢にたたかってもらいたい。
 かつてのように言論や情報を統制し、一部の戦争遂行者のみを利するような戦争を東アジアで起こしてはならない。そのためには、ロシアの声も、中国の声も、ASEANの声も訴え続けるという役割を果たしてもらいたい。


  ウクライナへの兵器供与に反対するドイツ市民のデモ

 報道では知らされることがないが、すでに世界の3分の2が停戦を望んでいる。すなわちアジア・アフリカ、中南米などグローバル・サウスの国々だ。私たちは、戦争の継続ではなく、平和を望む人々と結ばなければならない。


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