「世界経済フォーラム」(通称、ダボス会議)。世界から政治、経済、技術、メディア等各界の指導者を集め、「今後の世界情勢を議論し、方向性を打ち出す」。1971年以来、毎年、会合を重ね、この総会に招かれることが「世界のトップリーダーに仲間入りできる登竜門」とまでいわれている。
今年も52人の国家元首を含む2700人の政府、民間の指導者やトップ経営者が集まった。感染症、ウクライナ戦争、環境・エネルギー問題などが熱心に議論されたとのこと。
そんな中で、ひときわ注目を集めたのが「環境問題対策として、肉食を止め、昆虫食に移行すべき」との議論だった。もともとはビル・ゲイツが提唱したもので、大豆などを加工した人工肉や、家畜と比べCO2の排出量が少ない昆虫食を普及させることで、世界の環境問題や食糧問題を解決しようと訴えている。ビル・ゲイツが資金を提供するWHO(世界保健機構)でも、同様の検討が進んでいるとのこと。ゲイツ氏は手回し良く、「ビヨンド・ミート」や「インポッシブル・ミート」など代替肉ビジネスに着手している。
「ダボス会議」とは、「陰の世界政府」と異名を取るほどの「世界の大富豪の集まり」である。ここでの議論や政策の方向性は数年後には世界の主流になっていることが多い。そんなアホな話がと思っているうちに、世界中は抗しがたい力で金儲けの犠牲になっていく。
真っ当なことが真っ当に通らない不条理な世の中だからこそ、当たり前の良識にまず立ち返ってみよう。「集英社オンライン」より元林農水産大臣・山田正彦氏の警鐘を以下引用する。
「私はコオロギについては食べるべきではないと思っています。漢方医学大辞典ではコオロギは微毒であり、とくに妊婦には禁忌だとされていますし、昔からイナゴや蜂の子は食べてもコオロギは食べないですよね。少なくとも私は食べません」
山田正彦氏はそう言って、昨今のコオロギブームに警鐘を鳴らす。山田氏と言えば1993年から衆議院議員を5期務め、2010年6月に菅直人内閣で農林水産大臣に就任。現在は弁護士業のほか、TPPや食の安全、食料安全保障の問題などに取り組んでいる。
この山田氏が、そもそもコオロギの食品としての安全性に疑問があるという。
乾燥させたコオロギ食品
「2018年9月に内閣府の食品安全委員会のホームページで『欧州安全機関、新食品としてのヨーロッパイエコオロギについてリスクプロファイルを公表』という情報が出されています。そこには動物衛生と食品安全において、著しいデータギャップが存在していて様々な懸念点が挙げられていました。
『総計して、好気性細菌数が高い』『昆虫及び昆虫由来製品のアレルギー源性の問題がある』『重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題がある』などです。この件については様々な議論がされていますが、わざわざリスクの挙げられているコオロギを食べる必要がないと思っています」
コオロギの品種や加工方法に関わらず、これまで食べられてきた歴史がない以上、何が起こっても不思議ではなく、安易に口にするのは「危ない」ことだと指摘する。
「徳島県の高校でコオロギを給食で試食したというのは新しく面白いことのように見えますが、食品安全委員会が出した情報を踏まえると、もう少ししっかり考えなきゃいけないのでは?と思ってしまいますね」
徳島の高校に提供された給食
また、補助金の噂について尋ねてみると山田氏はこう話す。
「ある国立大学でコオロギのゲノム編集の研究を行っているけど、その研究所にはコオロギ食品で有名な企業のCEOが講師として名を連ねています。この研究に対し国の予算がけっこう使われているはずです。
ゲノム編集というのは狙った遺伝子を意図的に変化させる技術ですが、まだ未知の部分が多すぎて安全とは言い切れません。2年前に私がアメリカに行った時にある会社がゲノム編集の食用油を売りだしていましたが、今ではその会社の株価が10分の1に下がって、最終的にその食用油は販売中止になっていました。
ゲノム編集の食品ってアメリカでは全然売れないんです。そんなものに日本は今、予算をつけてどんどん取り入れようとしているわけです」
ゲノム編集や遺伝子組み換えの危険性については山田氏がプロデュースして撮影されたドキュメンタリー映画『食の安全を守る人々』でも触れている。
「40年前、遺伝子組み換えの研究をやっていた方が、除虫菊の遺伝子をトウモロコシに入れる実験をしたところ、トウモロコシからバラのような棘が生えてきて驚いたそうです。それにインドでは遺伝子組み換えの綿の種や農薬、化学肥料などの購入費用で借金を作ったり、健康被害などに遭った方が20万人以上自殺しています。
かつては遺伝子組み換えの農産物で世界の飢餓を救うと言っていましたが、FAO(国連食糧農業機関)の統計でも結局、人類を飢餓から救っているのは昔ながらのその土地にあった在来種が中心ですよね。だからやるべきはゲノム編集とか遺伝子組み換えとか昆虫食とかっていう話ではないんですよ」
世界的な食料危機のためと昆虫食やコオロギ食は推進されているが「それは建前で実態はまるで違う」と山田氏は主張する。
「多国籍企業のお金儲けのためというのが背景にあると思いますよ。種子法廃止の時に、ある化学メーカーがすすめていた米は、農家との契約書を見たら米の指定された農薬と化学肥料はセットなんです。だから日本の農家から『米の種、農薬、化学肥料』の3点で儲けようとしているビジネスモデルなんです。
ちなみにこの化学メーカーの米の価格は『コシヒカリ』の10倍です。それと同様に多国籍企業がお金儲けのために、昆虫食とかゲノム編集と言っているのだと思います。本当に安全な食品を、それこそSDGsと言うのであれば昆虫食やコオロギなんかじゃなくて、同じたんぱく質なら補助金を出して遺伝子組み換えじゃない国産大豆に頼るべきだと思います。それで十分まかなっていけるはずです」
コオロギパウダー
「できればみんな、日本のおいしいお米や野菜などを食べたいでしょう」と山田氏。ただ2018年4月に種子法が廃止され、食の安全に危機が迫っているという。
「戦後、米や麦、大豆の安定供給を国が果たすべき役割としていた種子法が廃止されました。私たちはそれを違憲だとして訴訟しています。戦後初めて憲法で保障された食の権利と、安全なものを持続的提供安定して提供を受ける権利について主張していて、3月24日に判決が言い渡されます。今、日本はコオロギを増やしていくとか昆虫食とかそんなことをしている場合ではありません」
そう力強く断言する山田氏は、今後も「安全な食の権利」のため闘い続ける意欲満々だ。