再エネはエコか?

biwap

2022年12月12日 10:28



 上の図は2018年10月14日、九州電力が実施した出力制御の様子である。土地が安く日照条件のいい九州では太陽光発電に事業者が殺到した。10月14日、九州の広い地域は晴天となり、太陽光の発電量が急激に増えた。発電量が最大になる午前11時~11時30分に供給力は合計1242万㌔㍗に達する。一方、需要は758万㌔㍗にとどまる見通しになった。そのまま放置すれば需給バランスが崩れてブラックアウトになる危険性が出たため、九電は出力制御に踏み切った
 太陽光は日照時間によって発電量が変動する不安定な電源で、晴天で発電量が増えるが、夜間や雨の日はゼロに近くなり、供給を調整することなどできない。もっと不安定なのが風力で、風速12~14㍍という、傘がさしにくく歩きづらいほどの風が吹くとき、はじめて効率よく発電する。風速3㍍以下のそよ風程度では発電はできないし、風速25㍍以上の暴風になると故障を避けて自動停止する。
 一方、原子力は常に臨界を維持しなければならず、出力調整などやれば大事故につながりかねない。そこで電力会社は火力発電の出力を増やしたり絞ったりして発電量を調整してきた。大規模蓄電池をつくることも課題に挙がっているが、現段階では実現困難と見られている。
 再エネの先進地、ヨーロッパではどうか? デンマークは電力の約4割を風力でまかなう「風力大国」だと宣言している。しかし、ヨーロッパは国境をこえて送電線がつながっており、実際には自分のところの不安定な風力の電気は送電線に雲散霧消させて、ドイツやフランスの電気を使っている。
 原発を減らし風力や太陽光を爆発的に増やしたドイツでは、雲のかかり具合、風の吹き具合によって電気が頻繁に足りなくなるため、バックアップのための火力がドイツ国内だけでは足りず、オーストリアにも待機させており、そのため年間で莫大な補償金を隣国に支払っている。
 電気の安定供給には役に立たない太陽光発電や風力発電の建設に、全国で参入する企業が後を絶たない。これに対して各地で住民の反対運動が活発になっている。


 長野県では、Loop社(東京)が諏訪市霧ヶ峰下で進める全国最大規模のメガソーラー計画に対して、住民が地域ぐるみで反対運動を起こしている。
 計画では霧ヶ峰近くの森林に、面積196・5㌶、つまり東京ドーム約40個分の土地にソーラーパネル31万枚を敷きつめるというもの。この地域の山林を大規模に伐採するとともに、10㌧トラック5万台分の土を運び出すという。
 通常、ソーラーパネルを設置する場合、敷地内の樹木はすべて根こそぎ切り倒し、豊かな腐葉土におおわれている場合はそれをすべてはがして運び出し、やせた土地に強力な除草剤を散布してパネルを設置する。障害物をなくして発電効率を高めるためだ。
 住民がもっとも危惧しているのは、森林を大規模に伐採することで保水力が失われ、災害時に土砂崩れや大洪水を引き起こす可能性があることだ。


 一方、風力発電をめぐっては、政府は全国4カ所に促進区域をつくり、洋上風力発電の建設を推進しようとしている。その促進区域の一つ、秋田県の由利本荘市では、事業者のレノバ(東京)が海岸から1・5~3㌔のところに、8000~9500㌔㍗の巨大風車を70~90基建てる計画を出してきた。すでに陸上には60基以上の風力発電が建っており、住民から頭痛やめまい、睡眠障害などの訴えが出ている。
 こうした住民生活を無視した、後は野となれ山となれ式の企業が横行するのも、政府が国策で再エネを推進し、風力や太陽光、バイオマスに参入する企業を増やすために、20年間、高い価格でその電気を電力会社に買い取らせることを保証しているからだ。そのカネは、すべての国民から「再生可能エネルギー促進賦課金」を毎月の電気料金のなかに含めて徴収することで捻出している。
 それはアメリカのオバマ政府がうち出した、グリーン・ニューディールという名の景気刺激策の延長線上にある。アメリカでは「地球温暖化防止」「低炭素社会」を掲げて、原子力とともに再生可能エネルギーによる景気刺激策に舵を切った。
 「CO2による地球温暖化の危機」を訴えてきた国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の議長自身、ロックフェラー財団の再生可能エネルギーアドバイザーとして、大企業にあぶく銭を稼がせるCO2排出権取引の指南をやっていた人物であった。
 そして日本では原発推進の総本山である経済産業省が、一方で原発を再稼働させながら、他方で「エコでクリーン」と宣伝して再エネ・ビジネスを煽ってきた。
 2013年に再生可能エネルギー促進のために、民有林や国有林、保安林、農地などにかかっている規制を緩和する「農山漁村再生可能エネルギー法」が閣議決定し、翌年5月から施行している。
 それは「これまで農地法で農業利用しか認めていなかった第一種農地でも、農地として再生することが難しい荒廃農地と、今後耕作が見込めない耕作放棄地は再エネ事業への転換を認める」「風力発電の風車は設置に必要な面積が比較的小さく、一度建ててしまえば農作業に支障は出ないので、それ以外の農地でも導入できる」「再エネを導入する事業を2018年までに全国100カ所に増やす」としている。
 その結果、日本中の山野も海もところかまわず風車を建てたりソーラーパネルを敷き詰めたりすることが可能になり、住民との大矛盾となっている。
 こうして「原発にかわるクリーンな再生可能エネルギー」といって風力や太陽光を増やせば増やすほど、再エネ・ビジネスで一握りの大企業がもうかるだけで、住民生活や地域の環境が脅かされるとともに、電気の供給はますます不安定になり、国民は常にブラックアウトの危険と隣り合わせの生活を強いられることになる。
 それは社会に甚大な損害を与えるもので、社会などどうなってもかまわないという、新自由主義の本末転倒を象徴している。まさに「わが亡きあとに洪水よ来たれ」だ。
 地獄への道は善意で敷き詰められている。無知な善意ほど危険なものはない。



関連記事