2014年7月1日、「集団的自衛権」閣議決定。2週間後の7月15日。『よくやったね、君たち』と首相官邸までわざわざ褒めにきてくれた人がいた。リチャード・アーミテージ元米国務副長官。米共和党きってのアジア専門家。日本、中国、朝鮮半島などアジア問題で大きな影響力を持つ。
アーミテージ氏らの主宰するCSIS。表向きは民間のシンクタンクで、政府や軍需産業のための調査・研究を行うコンサルタント会社。レーガン政権時代に作られ、「米国は世界の警察官であるべき」というネオコン(新保守主義の急進派)のフロント組織とも言われる。各種メディアを通じて米国内外に多大な影響力を持つ。アーミテージは、国務副長官の職を離れた後も、CSISを通じ「アーミテージ・レポート」を3度も公表。その度に日本政府に影響を与えるなど積極的な政治活動を行ってきた。
2012年に発表された「第3次アーミテージ・レポート」。
2015年8月19日、参議院特別委員会で山本太郎議員は「今回の安保法案は、第3次アーミテージ・ナイ・レポートの完コピだ!」と詰め寄った。
「原発の再稼働」「TPP参加」「特定秘密保護法」「防衛装備移転三原則」「安保法制」。誰が見ても、このレポートをそのままなぞっていったのは明らかだ。「知日派」がレポートを出せば、それを米国中枢の声として日本側がマスコミを通じて拡声器状態にして拡散する。それにより、日本が米国中枢に対処を迫られているという理由で膨大な兵器の購入や軍事基地建設に取り掛かるという「自発的対米従属」が現出する。
日本側が外遊で渡米し交流するのは、専らアーミテージら軍産複合体ロビーやシンクタンクのメンバー。日本から多くの将来有望な若手官僚や政治家がCSISに出向して学んでくる。日本人では小泉進次郎や、浜田和幸、渡部恒雄などが一時籍を置いた。現役政治家とも縁が深く、麻生太郎や安倍晋三なども度々CSISを訪れ、講演やスピーチを行っている。
トランプ政権の誕生時に真っ先に要職から外され、事実上失脚状態にあったアーミテージ。しかし、2018年10月3日時事通信は次のように伝えている。
<アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループは3日、米政府の対日政策や日本政府の取り組みに関する提言「21世紀における日米同盟の刷新」を発表した。中国の脅威に対抗するため、米軍と自衛隊が基地の共同運用など安保面で連携を強化するよう提唱。内向き志向を強めるトランプ政権に代わり、日本がアジアでより強いリーダーシップを発揮することが必要だと訴えた。(中略)
安保関係では、中国の軍備拡大と北朝鮮の核・ミサイルの脅威を前に、日本が防衛支出を国内総生産(GDP)比1%以上に拡大することが必要だと指摘した。
その上で、在日米軍と自衛隊との基地統合を進めたり、共同統合機動部隊を設置したりすることで、有事に備えて意思決定の速度や部隊運用の効率性を高めるよう訴えた。
経済面では、日本を含む他国との貿易不均衡是正に執着するトランプ政権をけん制する一方、日本が米国抜きの「包括的および先進的環太平洋連携協定(TPP)」を主導したことを評価した。ただ、日本は経済自由化をさらに進められると述べ、経済の構造的問題解決に向けた日米間のさらなる議論を求めた。
また、北朝鮮の非核化に関しては「検証不可能かつ不完全な非核化の見返りとして、軍事演習や在韓米軍、ミサイル防衛を交渉材料にすべきではない」と明言。在韓米軍の規模縮小の可能性もにおわせるトランプ氏にくぎを刺した。>
その「闇の力」には踏み込めないはずの日本のメディアは、「知日派」の提言として素知らぬ顔で報じている。しかしその実態は、死んだはずの「ジャパン・ハンドラー」が生き返り、6年ぶりにレポートを発表して、安倍政権に対する「指令書」を突きつけてきたということだ。トランプ政権から実質的にクビにされた人たちが、現・米政権の政策を批判した上で、エラそうに「日本に対する指令書」をこれ見よがしに出すという奇怪さに誰も気がつかない(気がつかないふりをしている?)。
旧戦争屋勢力を駆逐し、覇権主義から撤退しようとしているトランプ。それを阻もうとする旧ネオコン戦争勢力。「ロシアゲート疑惑」も「巨額脱税疑惑」も、その壮絶な権力闘争の一局面である。その実態を正確に認識し判断することは不可能だ。しかし、少なくとも朝鮮半島に平和が訪れることを望まない人たちがいることは確かなようだ。その悪霊がとりついたかのように、南北和解を苦々しい目で見ている人たちのいることも事実だ。そして、専門家と称する「巫女」たちは、いろんな屁理屈でその「悪霊」の言葉をメディアで垂れ流し続ける。
簡単なことさ。戦争がなくなり、平和になれば、経済も発展し、東アジアの新しい成長の時代が始まる。ミサイル防衛システムなんかはとっとと災害対策にまわし、基地のない沖縄をアジアの平和と観光の拠点にすればいい。そんな国際情勢の中でこそ、朝鮮半島の非核化は完全に実現する。順番を間違えず、目指すものをしっかりと見据えることだ。