一言、言いはなつ神
勝手に読む古事記・15
殺害されたアナホノミコ(安康天皇)の弟オホハツセは、別の兄2人を殺害し、アナホノミコを殺したマヨワも滅ぼしてしまう。さらに次期皇位後継者と目されたイチノヘノオシハを狩りの場で射殺し、遺体を切り刻んで桶に入れ地中に埋めてしまった。こうしてオホハツセは、第21代雄略天皇として即位する。殺害されたイチノヘノオシハの幼い二人の子オケとヲケは、密かに大和を逃れ牛飼い馬飼いに身をやつして隠れ住む。後の顕宗天皇、仁賢天皇である。さて、雄略天皇が葛城山に登った時のこと、山の上から天皇の行列と同じ装いをした一行がやって来た。これが葛城山の神・一言主(ヒトコトヌシ)であった。天皇は神を伏し拝み、自分の太刀や弓矢を捧げた。葛城氏が独自に行っていた一言主神の祭祀の主導権を雄略が握ったことを物語る。中国に使いを送り、版図を広げたことを誇った「倭王武」。彼こそ雄略だったのだろう。それにしても、一言主・役行者・土蜘蛛。葛城は権力にまつろわぬ、もう一つの世界だった。この後、古事記の記述は推古天皇まで淡々と進み、終了する。
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