ソルジャー・ブルー
『ソルジャー・ブルー』(Soldier Blue)。1970年公開のアメリカ映画。西部開拓史の汚点「サンドクリークの大虐殺」を真っ向から描いた問題作。実際にあった大虐殺を余すところなく再現。白人が「インディアン」に対して何を行ってきたのかを観客に突きつけた。従来の自己チュー「西部劇」は見事に吹き飛んだと云われる。
白人にとっての西部開拓史は、ネイティブにとっては殺戮と略奪の歴史であった。コロラド州では「サンドクリークの大虐殺」に先駆けて、白人の大集会が開かれている。有志の寄付によって「インディアンの頭の皮の買い取り資金」として5000ドルが集まった。金鉱に群がった侵略者たちにとって、周辺の「インディアン」はフロンティアを害する障害にすぎなかった。「野蛮なインディアンの絶滅」は、入植者の悲願だった。
『ロッキー山脈ニュース』は「インディアンの脅威」を書き続けた。「インディアンが陰謀を企んでいる」。白人と「インディアン」の間のどんな些細な諍いでも、「インディアンによる大虐殺」として報告された。
「入植者と軍は、彼ら、彼らの住居、女達、およびすべてのために、(インディアンを殺しに)行かなければならない」。
凄まじい惨劇が繰り広げられた。映画は、1864年の「サンドクリークの虐殺」を提示することによって、ベトナム戦争での「ソンミ村虐殺事件」を告発したものだとも云われている。
1968年3月16日。南ベトナムに展開するアメリカ陸軍の第1小隊が、ソンミ村のミライ集落を襲撃。無抵抗の村民504人(男性149人、妊婦を含む女性183人、乳幼児を含む子供173人)を無差別射撃などで虐殺した。集落は壊滅状態となり、生存者はわずか3人だった。
この虐殺事件は、現場に居合わせた複数のアメリカ軍兵士から軍上層部に報告されていた。軍上層部は、アメリカ世論をベトナム反戦運動の方向へ導く可能性が高いことなどから、事件を隠蔽し続けた。
その後、イラクで、アフガニスタンで、中南米で。自国から遠く離れた場所で、「世界の憲兵」は、「自由と民主主義」の旗の下、介入と殺戮を繰り返してきた。まるで、「悪いインディアン」を退治するかのように。
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