才女はおっとりと
道草百人一首・その80
「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて 傾くまでの 月を見しかな」(赤染衛門)【59番】
ライバル「紫式部」対「清少納言」。そのどちらとも友達だったのが、赤染衛門(アカゾメエモン)。赤染時用(トキモチ)の娘と言われるが、平兼盛が実父という説も。「衛門」は父の官名。文章博士・大江匡衡(マサヒラ)と結婚。この二人、おしどり夫婦として有名。夫の死後は尼僧となり、85歳以上まで生きた。百人一首73番「高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 たたずもあらなむ」の大江匡房(マサフサ)は曾孫にあたる。
和泉式部と並び称される才女だが、恋多き和泉式部とは対照的に良妻賢母タイプ。性格は穏やかで寛容。女性としても尊敬された。この歌も、妹のために代作したもの。
あらあら、まだ宵の時分に東から昇った月が、とうとう西の山に沈む頃になってしまいましたわ。もうすぐ夜明け前。あなたがおいでにならないことが最初から分かっていたら、やきもきせずにさっさと寝てしまいましたのに。あなたを待って、西山に傾いた月を見るはめになってしまいましたわ。
すっぽかされた女性の恨み節と思いきや、カラッとじめつかない歯切れの良さ。人格的にも洗練された女性の「ウッテガエシ」。お見事。
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