「おそ松さん」
松野家の六つ子、おそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松は20歳を過ぎても定職につかず、親の脛をかじるいわゆるニート。仕事にも女性にも縁がない個性的な6人は、時に足の引っ張り合いをしながらも、ひとつ屋根の下で暮らし、それぞれの趣味にいそしむ日々。そんな彼らに、うさんくさい男イヤミ、おでん屋のチビ太、六つ子のアイドル的存在トト子に、科学者もやっているパンツ一丁のおじさんデカパン、口がでかい怪人ダヨーンなどの面々が加わり毎回騒動が巻き起こる。
おそ松。イメージカラー赤。六つ子の基本形とも言うべき容姿をしているが、無邪気な表情が特徴的。小学6年生の頃の心を持ったまま成長してしまった「奇跡のバカ」。計画性がほとんど無くいい加減でずぼらな性格。しかし、ここぞと言う時は個性の強い弟たちをうまくまとめるリーダーシップを発揮する。
カラ松。イメージカラー青。太くキリリとした眉毛が特徴で、よくサングラスを掛けている。常にクールを気取って格好を付けているが、根は向こう見ずな熱い性格。極度のナルシストで自分をイケメンだと思い込んでいる。自意識過剰な性格のせいで理不尽な目に遭うことも多い。
チョロ松。イメージカラー緑。黒目が若干小さめで後頭部の癖毛がない。他の兄弟と比較して常識的な考えの持ち主で性格も真面目。それゆえにツッコミ役を担うことが多く苦労人でもある。唯一無職であることに危機感を抱いているが、意欲だけが空回りして結局職に就けないでいる。
一松。イメージカラー紫。常に半目で生気がなく笑顔も冷めており、髪の毛はボサボサで猫背。マイペースな皮肉屋でしれっと毒を吐くことが多い。無気力な上にぼそぼそと話す根暗な性格。自虐的で、自らをゴミ扱いすることすらある。反面、何らかのスイッチが入ると思い切りのある行動を起こす。
十四松。イメージカラー黄色。口を開けて笑っているような表情が多く、目の焦点が合っていない。いつも異様に明るくハイテンションな天然系バカ。何を考えているか分からず行動も予測不能。ただし、誰にでもしっかりと挨拶を行うなど礼儀正しい一面も持っている。運動神経は全般的に高い。
トド松。イメージカラーピンク。黒目が若干大きめで愛嬌のある表情をしていることが多い。また、帽子をよくかぶっている。コミュニケーション能力が高く甘え上手だが、弟らしいかわいさを利用するなどあざとく腹黒い一面もある。20代になった現在でも夜中に一人でトイレに行くことができない。
「おそ松くん」をアレンジしたアニメ「おそ松さん」。亡くなってから8年近くの時が経っても、赤塚不二夫は話題を振りまき続けている。暴力シーンはいっぱい出てくるが、弱虫でチビのハタ坊がいじめられるシーンは決して出てこない。喧嘩も、対等か、強い者に逆らう時に起きている。弱い者いじめはしない。赤塚作品で貫かれているこの姿勢は、彼の子ども時代の体験によってできあがったもの。
赤塚不二夫。1935年9月14日、「旧満州国」と中国の国境沿いの町で生まれた。父親は、奉天で消防分署の署長を務めていた。いわば現地の中国人たちを監督する立場。尊大な態度を取り、中国人を痛めつけたとしても不思議ではない。しかし、父の行動は、それとは真逆のものだった。
「学校では先生から、中国人を蔑視した教育を受けていたけど、ボクは学校から帰ってくると、中国人の子どもたちと、官舎のまわりで犬コロみたいに遊んでいた。中国語で、みんないっしょになって生活してた」
小学6年の時、引き揚げて母の郷里、奈良県大和郡山へ移住。満州からの引き揚げ家族。「よそ者」以外の何ものでもない。今度は「差別される」立場に。学校でもイジメの対象となる。そんな赤塚不二夫をガキ大将がかばってくれた。弱い者を守り、決して差別しない。それは、漫画家・赤塚不二夫に受け継がれる。
急速に寛容さを失っていく日本社会。多様性を認めることができない社会になりつつある。
「僕は、この世の中に『いい人』だけの人なんて、いないと思っている。同じように、『悪い人』だけの人もいない。世の中って、正しいことも悪いことも、美しいことも汚いことも、恵まれている人もハンディを背負っている人も、金持ちも貧乏人も、おバカも利口も、賛成も反対も、糞も味噌も、ぜーんぶごちゃ混ぜになってるのだ。それが世の中ってぇものだからね。それでいいのだ‼」
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