断崖絶壁の花

biwap

2015年04月09日 06:34

道草百人一首・その53
「もろともに あはれと思へ 山桜 花より外に 知る人もなし」(大僧正行尊)【66番】


 白河上皇の養女・藤原璋子(タマコ)。白河は息子の鳥羽天皇に璋子を嫁がせる。しかしそのお腹にはすでに白河の子が身籠っていたというドロドロしたお話。この時、璋子に取り憑く物の怪を調伏したのが大僧正行尊(ダイソウジョウギョウソン)。藤原道長に帝位を追われた三条院(68番)のひ孫。10歳で父を亡くし、12歳で出家し三井寺に入る。その後、修験道の行者となった。大峰山での厳しい修行の最中、ふと目の前に現れた山桜。「山桜よ、私がお前を見て愛しいと思うように、お前もそうであってくれたら。お前の他に私の心を分かってくれる者はいないのだから」。人生の断崖絶壁で見た、美しい生の証。生きる希望。


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