私一人の秋

biwap

2015年01月17日 07:28

道草百人一首・その40
「月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」(大江千里)【23番】


 月を見ていると、なんだかいろいろともの哀しさがこみ上げてくる。私一人のためにきた秋ではないけれど。白楽天の「燕子楼(エンシロウ)」という詩を踏まえたものとして知られている。「燕子楼中霜月夜 秋来只為一人長(燕子楼に霜が降りる月夜。私一人のために秋の夜は来て、こうも長い)」。「秋の夜は私一人のため」を「私一人のためでなく」と真逆にひっくり返す千里の美意識に感服。大江千里は、漢詩人としても有名。名高い漢詩を和歌に移し替えて詠むのは、得意中の得意。実は、在原行平・業平兄弟の甥っ子にあたる。伊予国(現愛媛県)の権守(ゴンノカミ)となるが、罪により蟄居。やはり、百人一首の面々は皆訳ありのようだ。


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