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2015年02月06日

そのやさしさに怨霊も

道草百人一首・その42 
「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」(貞信公)【26番】

そのやさしさに怨霊も

 小倉山の峰の紅葉よ。お前に心があるなら、もう一度天皇が来られるまで、散らずに待っていてくれないか。この歌は、宇多上皇が嵯峨野で小倉山の紅葉に感動し、我が子・醍醐天皇にもこの紅葉をぜひ見せたいと言ったのを貞信公が詠ったもの。貞信公(テイシンコウ)とは、藤原忠平(タダヒラ)のこと。父は絶大な権力を握った藤原基経(モトツネ)。宇多天皇即位の時、阿衡事件という一悶着を起こしている。基経死後、宇多天皇は藤原氏を牽制しながら親政を行った。この時、登用されたのが菅原道真。宇多は醍醐に譲位するが、ここで「宇多上皇・菅原道真」vs「醍醐天皇・藤原時平(忠平の兄)」という構図ができあがる。時平は道真を讒言により追放し、政権を掌握。怨霊となった菅原道真は、時平の係累に襲い掛かる。恐るべき復讐劇の始まり。時平は39歳の若さで狂死。時平の弟・忠平だけは大宰府の菅原道真に励ましの手紙を送っていたりして無事。忠平はこの後、摂政・関白となって藤原北家繁栄の基礎を作る。やはり人には優しくしておかなきゃ。