韓国は『敵』なのか
朝日新聞2019年7月25日「論壇時評」。ジャーナリスト津田大介さんの文を抜粋引用する。
<政府が韓国向けの半導体材料3品目の輸出規制を厳格化する措置を発表したことが大きな議論を呼んでいる。安倍首相は3日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会で韓国の元徴用工訴訟に触れ、「1965年に(日韓)請求権協定でお互いに請求権を放棄した。約束を守らない中では、今までの優遇措置はとれない」と語った。同日、世耕経産相もツイッターで今回の措置を実施した経緯について、日韓間で生じている輸出管理の問題と元徴用工問題などで信頼関係が損なわれたことを理由として挙げた。
規制措置の実施を受け、ネット媒体では「輸出規制措置をとることは、韓国の無法を国際的に知らしめる」「韓国経済の生死を決めるのは日本であることをわからせなければならない」といった勇ましい言葉で今回の措置を肯定する議論が目立つ。実施直後に行われたJNN世論調査では今回の措置を妥当だとみなす国民が58%に及んだ。背景に日韓関係の悪化があることは明白だ。(中略)
なぜ日本は自分たちにとって経済的メリットの薄い輸出規制を進めるのか。木村幹はその理由を「政策の効力にではなく、これにより『韓国を痛めつけ』あるいは『痛めつけようとする』のだ、というメッセージそのものにある」と分析する。理路をたどって両国の中長期的な利益を模索するよりも「韓国が苦しむ姿を見たい」という国民をターゲットにした「感情」に訴えかける政策を、日本政府はあえて採っているということだ。そしてその政府の狙いは、世論調査を見る限り、現政権の支持率を下支えする結果をもたらしているようにも見える。(中略)
韓国ギャラップが12日に発表した世論調査結果によると日本に「好感が持てる」と回答した人は12%と91年の調査開始以降最低となった一方、日本人に「好感が持てる」とした人は41%に及んだ。このような状況下であっても国と個人を区別できている分、韓国人の方が日本人よりも若干冷静と言えるかもしれない。参院選も終わった今だからこそ、ヒートアップした対韓感情を冷まし、政経分離を進める政策を政府には望みたい。>
ほとんど嫌韓プロパガンダと化したテレビを見ていると、こんな時にこそ時流に迎合せず冷静に発言できる人がホンモノなのだと分かるようになってきた。妙なポピュリズムに踊らされるよりも、知性の力を地道に信頼していくしかないのではないか。
7月25日に「韓国は『敵』なのか」という日本の知識人による声明が発表された。韓国KBSニュースやハンギョレ新聞で初めてその存在を知り、ネットでたどり着いた。呼びかけ人の中にも多様な意見があるようだが、もう黙っていられないという「良識」の叫び声に共感した。賛同署名の拡散。これは私たちの「知性のロウソク革命」だ。
(
https://peace3appeal.jimdo.com/)
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