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2016年06月29日

プライドが許さない

道草百人一首・その81
「恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ」(相模)【65番】

プライドが許さない

 スサノオとの戦いに敗れた八岐大蛇。出雲から近江へと落ち延び、そこで長者の娘・玉姫御前に産ませたのが酒呑童子。その酒呑童子や土蜘蛛を退治した源頼光の娘が相模(サガミ)。相模守・大江公資(キミヨリ)の妻となり任国へ一緒に行ったので、相模と呼ばれた。しかし、結婚生活はうまくいかず、間もなく破綻。奔放な恋の遍歴が始まる。有名なところでは、百人一首64番・藤原定頼(サダヨリ)。定頼の方も58番・大弐三位や60番・小式部内侍との浮き名を流している。
 そんな相模が50歳にして詠んだ歌。泣いて袖が涙で濡れ続けてぼろぼろになるのさえ惜しいのに、「恋に破れて毎日泣いているんだそうだ」と噂されて、さらに私の評判まで落ちるなんて、なんと悔しいのでしょう。鬼退治のプライドが許さないのか。百人一首の撰者・藤原定家は、相模の恋歌が好きだったようである。