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2014年10月27日

雄大な富士か優雅な富士か

道草百人一首・その30 
「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ」(山部赤人)【4番】

雄大な富士か優雅な富士か

 山部赤人。柿本人麻呂とともに歌聖と呼ばれ称えられている。百人一首3番・人麻呂の「夜の闇」に対し、4番・赤人は「雪の白さ」を歌っている。経歴は定かではないが、聖武天皇時代の宮廷歌人だったと思われる。歌意は、「田子の浦まではるばる来てみると、富士山の高いところは真っ白になっている。今でも雪は降り続いているのだ」。ところが、この歌は万葉集に違った形で載っている。「田子の浦ゆ うち出でてみれば真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」。「田子の浦ゆ」の「ゆ」は、経由の由(ゆ)。「降りける」は、降った後ということになる。歌意はこうなる。「田子の浦を通って視界が開けたところまで出てみると、富士山の高いところには真っ白い雪が積もっていた」。「真白にぞ」と、いかにも万葉集らしい雄大な表現。どちらが好みかは、人それぞれ。滋賀県東近江市下麻生町には、山部赤人を祀る山部神社と、山部赤人の創建で終焉の地と伝わる赤人寺がある。