2014年10月21日
人麻呂の憂愁
道草百人一首・その29
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」(柿本人麻呂)【3番】

秋の夜長の寂しさがつのるのは、今も昔も変わらない。「山鳥の尾の しだり尾の」と音感の面白さが感じられる。万葉集最大の歌人とも言われる柿本人麻呂。しかし、その生涯はまったくの謎につつまれている。出自、経歴、生没年すべて未詳。下級官人としての生活を送ったのち、奈良遷都以前に没したらしい。「大君(オオキミ)は 神にしませば 天雲の 雷(イカズチ)の上に いほりせるかも」。近江朝を滅ぼした天武を称える歌である。「日本」という国号や「天皇」という称号がこの時期に確立する。しかし、人麻呂の視線は、滅び去った近江朝に向けられる。「近江(アフミ)の海(ミ) 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ 」。確実に年代の判明している人麻呂の歌は、天智の娘・持統天皇の即位からその死去にほぼ重なっている。この女帝の存在が、人麻呂とどのように関わっていたのか。最後に石見国で亡くなったとされるが、その死には暗い影がつきまとう。秋の夜長の寂しさも、何か違う意味に感じられてしまうのだ。
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」(柿本人麻呂)【3番】

秋の夜長の寂しさがつのるのは、今も昔も変わらない。「山鳥の尾の しだり尾の」と音感の面白さが感じられる。万葉集最大の歌人とも言われる柿本人麻呂。しかし、その生涯はまったくの謎につつまれている。出自、経歴、生没年すべて未詳。下級官人としての生活を送ったのち、奈良遷都以前に没したらしい。「大君(オオキミ)は 神にしませば 天雲の 雷(イカズチ)の上に いほりせるかも」。近江朝を滅ぼした天武を称える歌である。「日本」という国号や「天皇」という称号がこの時期に確立する。しかし、人麻呂の視線は、滅び去った近江朝に向けられる。「近江(アフミ)の海(ミ) 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ 」。確実に年代の判明している人麻呂の歌は、天智の娘・持統天皇の即位からその死去にほぼ重なっている。この女帝の存在が、人麻呂とどのように関わっていたのか。最後に石見国で亡くなったとされるが、その死には暗い影がつきまとう。秋の夜長の寂しさも、何か違う意味に感じられてしまうのだ。
Posted by biwap at 06:30
│道草百人一首