› 近江大好きbiwap › 道草百人一首 › 怨霊転じて天神となす

2014年10月07日

怨霊転じて天神となす

道草百人一首・その28 
「このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」(菅家)【24番】
怨霊転じて天神となす
菅家。学問の神様・菅原道真である。35歳の若さで最高の権威・文章(モンジョウ)博士となり、54歳で右大臣にまで出世する。しかし諫言により、九州・太宰府に流され、59歳で没す。道真が京の都を去る時に詠んだ歌が、「東風(コチ) 吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」。その梅が、京の都から一晩にして道真の住む屋敷の庭へ飛んできたというのが「飛梅伝説」。道真の怨霊はすさまじいものだったらしく、怨霊慰撫のために造営されたのが、現在の「北野天満宮」。かくして、強力な怨霊パワーは天神パワーへと転化する。百人一首のこの歌は、道真の才能を買って右大臣にまで取り立てた宇多天皇の宮滝御幸の時に詠まれたもの。「今度の旅は急のことで、道祖神に捧げる幣(ヌサ)も用意することができませんでした。手向けの山の紅葉を捧げるので、神よ御心のままにお受け取りください」。幣(ヌサ)の代わりに、美しく色づいた紅葉を捧げましょうという歌。吉野の山の絢爛豪華な紅葉がまぶしく輝いているようである。